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水産物 医食同源
冬将軍にゃあ、「ナベ奉行」のあったか裁きが一番でぃ! 10
掲載日:2007年04月11日
 
 ダイコンアイコンまいど、まいど、イダテンのゲンさんです!
 いやあ、注目の都知事選だったが、やはり石原知事の再選になっちまったなあ。遊興費のことや四男の問題などが取り沙汰されていたものの、いざフタを開けてみれば圧勝という形・・・これで石原都政の方向で4年間進むことになったわけだ。
 世間じゃ東京五輪ばかり大きく取り沙汰されているけど、あっしの仕事場・築地の中央卸売市場じゃあ、移転問題で騒がしいところだ。石原氏の再選で方向がハッキリするだろうから、移転するしないで一悶着あるだろうな。あっしも魚河岸の連中の間に入って、アタマのイタい日が続きそうだよ〜。
 ともあれ、商売は商売。
 これからゴールデンウィーク商戦に入っていく、そっちの方が肝心だ。食材仕入ドットコムさんも、生鮮青果のリニューアルなど、さまざまなサービスで奮闘中だ。
 みなさま、ご注文のほど。お待ち申し上げやすぜ!
   
  春の雪見に「雪鍋」を
   今回は先日降った、春の雪に合わせてというワケじゃないが、「雪鍋」ってやつを取り上げてみよう。雪鍋は「みぞれ鍋」とも呼び、見ての通りタップリの大根おろしを鍋に入れて、それを雪に見立てて食べるという、実に日本人好みのお鍋さまだ。
 見た目も名前もきれいで美味しく、どんな具材とも相性が良いことに加え、健康にもすぐれている言うことなしの鍋料理だが、あっしの記憶ではそんなに昔からあったワケじゃなかったような気がする。
  ゲンさんのイラスト
 

 かの池波正太郎先生は「細かく切った大根で豆腐を煮れば、不思議と”す”が入らない」と仰っているそうだが、それが雪鍋のことではなさそうなんだ。まあ、大根と豆腐は相性が良いって話さね。
 雪鍋は誰でも考えそうな単純なレシピだが、おそらくわりと最近になって食べられるようになった鍋じゃないか、あっしはそんな風に考えている。考えてみると豆乳鍋なども、あっしの若い頃はそんなに一般的なものではなかったしね。
 もう20年以上前だが、京都は先斗町で雪鍋をいただいたことがある。あっしにとってはそれが最初に印象に残っている雪鍋だな。京豆腐に油揚げ、水菜にタップリの聖護院大根のおろしで食べたんだが、見た目の品の良さに加え、いや旨えの旨くねえのって! 聖護院大根は千枚漬けや煮物に使うのが一般的だが、”おろし”にしてもイケるもんだなと驚いた覚えがある。
 別段、京都の郷土料理ってわけでもないんだろうが、雪鍋ってえのは京の都にピッタリの食べ物と思った次第さね〜。

  雪鍋レシピ
  大根おろしは胃腸薬だった?
   ときにお客さん。俗に下手な役者とかけて「大根役者」と呼ぶことがあるが、ありゃ何でだか知っているかい?
 そのこころは、”いくら食べても当たらない”ってことで・・・はあ、お粗末さま。
 いや、これは実際の話。何といっても、大根ってえのは昔から胃腸に良いとされてきた野菜だ。大根は95%が水分という水ぶくれ野郎だが、何といっても消化を助ける酵素・ジアスターゼの効能が素晴らしいんだ。ジアスターゼは、デンプンやグリコーゲンなどを分解するのに優れた酵素だが、大根にはそいつらが豊富に含まれてるってワケよ。
 実際にジアスターゼの効能を用いて世界中に広まった胃腸薬に、かのタカジアスターゼがある。タカジアスターゼは今から100年以上前に、高峰譲吉博士※1がウイスキー醸造から生み出した画期的な胃腸薬だが、こいつは現在でも販売されていて、胃腸薬として多くの人の健康に寄与してるってえんだから驚きさね。
 
青首大根: 青首大根愛知県で育成された品種で、もっとも市場に出回っている大根。味も良く、栽培しやすく、病気に強い。
聖護院大根: 聖護院大根京都に昔からあった大根に、青首大根の原種「宮重」を交配させたもの。身が詰まっていて、千枚漬けやにもなどに使われることが多い。
桜島大根: 桜島大根鹿児島の火山灰のもとで育成される世界最大の大根。大きなものは20kgを肥える。かす漬けなどにすると美味しい。
守口大根:
守口大根
世界最長の大根。辛味が強く、繊維が多いので生食には不向き。漬物に向く。大阪の守口漬けが有名だが、実際は愛知や岐阜で生産される者が多い。
 
守口漬け守口漬け
:大阪守口市周辺で作られる粕漬けの一種。
辛味大根: 辛味大根京都の名産。蕎麦の薬味に最高だが、それなりに蕎麦も強くないと大根に負けてしまうので注意。
練馬大根:
練馬大根
文字通り練馬を中心に栽培された大根。大き過ぎて消費者からも流通業者からも敬遠されたが、最近になって地元練馬では町おこしに復活させようという動きもあるようである。タクアンなどの漬物に向く。
ラディッシュ:
ラディッシュ

(白長)
ヨーロッパ大根で唯一日本で栽培されているもの。

(赤丸)
ヨーロッパ大根で唯一日本で栽培されているもの。両方ともサラダ用が主流。

ラディッシュ
 

 漱石の「吾輩は猫である」の中にも、自分自身がモデルという苦沙弥先生がタカジアスターゼを飲む場面があるんだが、そいつをちょっくら紹介いたしやしょう。タカジアスターゼがタカジ”ヤ”スターゼになっているのが、時代を感じさせるところだね。

「吾輩は時々忍び足に彼の書斎を覗いて見るが、彼はよく昼寝をしている
事がある。時々読みかけてある本の上に涎(よだれ)をたらしている。彼は胃弱で皮膚
の色が淡黄色を帯びて弾力のない不活発な徴候をあらわしている。その癖に
大飯を食う。大飯を食った後でタカジヤスターゼを飲む。」

 何でも胃酸過多の人ってえのは、大飯をかっこんで1〜2時間後くらいに胸焼けすることが多いんだそうだ。あっしの勝手な想像だと、どうやらこの場面からは漱石が胃酸過多傾向にあったんじゃないかって気がする。
 え? ゲンさん、医者でもないくせに、何でそんなことが言えるんだって?
 なぜってあっしの若い頃に、思い当たるフシがあるからよ。あっしは胃弱じゃないけど、大飯を食うとよーく胸焼けを起こしたもんだからな。”タカジヤスターゼ”はそんな苦沙弥先生ならぬ、漱石の大切なお供だったのかもしれないよ。

 
   
※1

高峰譲吉は三共製薬(現在は第一製薬と合併し、第一三共株式会社となっている)の初代社長だった。

   
  雪鍋の”おろし”は手早さが身上
   実際、ステーキやハンバーグのように食べごたえのある料理をいただく時、大根おろしと一緒に食べると後に残らないことが多い。これはもちろん大根に含まれるジアスターゼをはじめ、プロテアーゼ、リパーゼといった強力な消化酵素のおかげだ。
 ただ、残念ながらこいつら酵素はひじょうに壊れやすい。熱にも弱いし、大根おろしにした場合など、時間が経つにつれて失われていく。
 だから雪鍋の場合、具材に火がまわって、食べる食前に大根おろしを入れるのがオススメだ。間違っても、最初から入れたりしないでおくれ。
 大根おろしは肉や魚の余分な臭いも緩和してくれるので、雪鍋にはどんな具材でも合わせることができる。食材仕入ドットコムさんでは、みなさんのお好み食材が手に入るから、どうぞご検討のほどお願いいたしやす。
 ひとつ食材選びのポイントを申し上げると、なんせ品の良さが身上の雪鍋。色がきれいに見える食材を選んでみては如何かな? あっしの好みでは白と緑、少々の茶色という組立がよろしいかと思う。食材ってえのは色のバランスで選ぶと、不思議と味も栄養価も高くなるもんだ。おひとつ試しておくんなせえ。
 さーて、時間が来やがった。
 それじゃ、お客さん! 次回をお楽しみに!
   
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