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水産物 医食同源
マンマミーヤ! イタリアン! その27
掲載日:2005年7月6日
 まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!
 梅雨どきなんて言いながら、こないだ東京じゃあ36.2度とか、6月としちゃ観測史上最高の気温を記録したそうさね。暑い暑いとは思ったけど、いきなり体温と同じ気温となると、お年寄りにはコタえる陽気だよ。
 また西日本のお客さんがたには、このカラ梅雨で水不足が懸念されるこの頃だ。
 なに、ゲンさんも還暦を越えたお年寄りだから、この季節のはコタえるだろうって?
 バカも休み休みお言いよ、お客さん。
 はばかりながら、このイダテンのゲンさん。40年間、魚河岸の看板を支えてきた男だよ。このくらいの暑さにネを上げるようじゃあ、みなさまに元気を差し上げるような食材は、とてもとても調達できるわけないだろう。
 ともかくも体調管理の難かしい季節。休養も仕事のうちってなモンで――みなさん、どうぞ無理なさらねえで、旨いもんをたんと食べておくんなせえ。
 夏の「お試しキャンペーン&特売セール」はまだまだ続くし、 新鮮で旨い食材は、このイダテンのゲンさんが腕にヨリをかけて集めてくるからよ。どうか、この時期――スイサンドンヤさんの食材で乗り切っておくれよ!
  ジェラートは1日にして成らず
   さて、今回のマンマミーア・イタリアン。前回に続いてシチリアの話だが、今回はちょっくら趣向を変えてイタリアのデザート、ドルチェとやらを取り上げよう。
 えっ。イダテンのゲンさんが、甘いもん食べるのかって?
 そのゴマ塩頭とハチマキに、ドルチェなんて似合わねえだって?
 どうも、みなさん。文字通りの大甘野郎だね〜。あっしが大酒飲みなもんで、甘いものは食べないと思ってるようだが、ところがどっこい――このイダテンのゲンさん。実は大福&お汁粉に日本酒、ワインにチョコレートと、酸いも甘いも、苦いもしょっぱいも、何でもござれの甘党なんだ。
 スイサンドンヤ・ドットコムさんでもケーキ類を扱っているもんで、前から甘味を取り上げてみたいと思っていたもんで、今回は良い機会ってわけだ。
   
  ジェラードな写真。
   もっとも、ドルチェにしても、ヨーロッパ菓子というのは奥が深く、とても1回や2回じゃあ、語りつけせない。ドルチェを含めた甘味全般は、いつかまとめて特集をすることにして、今回は、季節がらアイスクリーム・・・イタリアではジェラート(単数形はgelati)と呼ばれる、世界中の誰もが好きなドルチェを中心に、ちょっくらお話しいたしやしょう。
 中でもシチリアは、イタリアの中でもジェラートの本場とされる土地――今日は、この甘くて美味しい究極のデザートを堪能していただきやしょう。
  ジェラートが先か? アイスクリームが先か?
  イラスト おっと、いけねえ。
 今、あっしは「アイスクリームは、イタリアではジェラートと呼ばれている」――なんて言ったけど、実はその表現は正確じゃない。
 たしかにアイスクリームとジェラートで、製法や味が違うことはもちろんだが――それ以前に、歴史的に見れば「ジェラートは世界に広がり、アイスクリームになった」という言い方が、正しいのさ。
 なぜなら、実は現在のアイスクリームのルーツってえのは、今から700年ほど前のシチリアにあるからなんだ。つまりイタリアのジェラートから、現在、世界で食べられているアイスクリームに変化し、発達していったってワケだ。
  写真 もちろん氷菓の類ってえのは、そのはるか昔からあった。山から運んだ氷を洞窟に保存し、夏の暑い時期に、ハチミツや樹液と混ぜて楽しむというのは、昔の権力者なら、みなやってきたことなんだ。
 かのアレキサンダー大王(BC356〜BC323)などは、エジプト遠征の際、自分で楽しむのを二の次に、雪をかぶせた冷たい飲み物を、兵士たちに飲ませて士気を高めたなんて話がある。また一方で、古代ローマの暴君ネロ(AD37〜AD68)もアルプスの万年雪をローマまで運ばせ、それにハチミツやバラの果汁、フルーツなどを混ぜて※1愛飲していたそうだ。
 それにしても甘味が貴重だった上、冷蔵庫もなかった時代に、誰もが真夏に氷菓を手軽に食べられたはずはない。
 それを大きく変えたのが、砂糖の伝来だ。
 シチリアってとこは、インドからヨーロッパへはじめて砂糖が伝わった地であり、アラブ世界を通じて、さまざまな食材や文化がやってきた場所でもある。
 インドを出発したサトウキビは、ペルシャからメソポタミアをわたり、地中海を通じてシチリア島に辿りついた。そして13世紀半ばには、パレルモ周辺に地中海最大の甘蔗(かんしゃ/サトウキビのこと)農場を有するようになったんだ。
 現在のイタリア料理では、味付けにほとんど甘味を入れないが、シチリア料理だけはコクづけに砂糖を使う。それには、そんな歴史的背景もあるわけさ。
   
※1/ この飲み物はドルチェ・ヴィータ(dolce vita)と呼ばれた。イタリア語で「甘い生活」を意味する。フェリーニ監督の名作「甘い生活」も、原題は同じ”Dolce Vita”。
   
  アラビアのジェラート
  イラスト それ以前――11世紀頃のアラブ世界には、ジェラートの原型になった「シャルバート」という氷菓があった。名前を聞いて想像がつくように、こいつはシャーベットやシロップの語源になったアラビア語で、「飲む」という動詞のシャリバが変化したものらしい。
 今でもイタリアじゃあ、シャーベットを「ソルベット」と呼ぶが、その言葉もシャルバートから来ているってわけだ。
 これは、バラや麝香(じゃこう)で香味をつけた砂糖水を、山の氷などで冷やしたもので、もっぱら病後や疲労回復のために飲まれていた。
  写真 あの「アラビアンナイト」の中でも、語り部のシェラザード姫と不眠症の王様が、しばしばシャルバートを口にする場面が出てくるんだが、おそらくは当時身分の高い人は、たびたび口にして飲み物だったのだろう。
 今でもイスラム圏でシャルバートは、断食のラマダン時期、日の入りとともに1日の乾きを潤す飲み物として欠かせないという。
 さて、そんなアラブの清涼飲料水シャルバートがシチリアに渡った時、レシピにちょっとした工夫がなされた。
 それは果汁やワインに砂糖やハチミツを混ぜ、バラなどで香りづけをしたシャルバートを卵の殻に入れ、標高3340mのエトナ火山の万年雪で凍結させるという方法だ。凍ったシャルバートの入った卵は、藁で保温されてパレルモまで運ばれて行ったって寸法さ。
 こいつがジェラートの起源と言われている。
 もっともこのレシピでできる氷菓は、氷の粒がプチプチして、今でいうとジェラートというよりは、「グラニータ」※2に近いものだそうだが、こいつが当時、たいそうな人気だったことは間違いないだろうな〜。
   
※2/ 水と砂糖とレモンの絞り汁を基本に作る、フラッペの一種でシチリア名物のひとつ。凍る直前に、何度もかき混ぜる作業をくりかえすので、氷の粒が砂のように細かいのが特徴。
   
  シチリア名物カッサータはいかが?
  イラスト もうひとつ、シチリア名物の氷菓のひとつに「カッサータ」がある。
 当時、11世紀末から13世紀末頃にかけて、十字軍の遠征がなされた一方で、貿易商人たちは、ちゃっかりアラブ世界と交易をしていた。
 おかげで両方のルートから、アルメニアの干しアンズや、シリアのレーズンなどのドライフルーツ。レモンの砂糖漬けのレモンピール。ザクロやオレンジ、イチジク、桃、サクランボにピスタチオ、アーモンド、などなど・・・さまざまな食材がシチリア経由でヨーロッパ社会に入ってきたんだ。
 こうしたアラブ・サラセン文化のもと、シチリアで創作されたドルチェがカッサータだ。
こいつはチーズ風味のジェラートをベースに、中に砂糖漬けのフルーツやナッツ類をふんだんに練り込んだもの。アラビア語のカサー(大きな深いボール)を語源とするように、大きなドーム型に入れて冷やすのが特徴だ。
 日本でも鹿児島には、練乳をベースにフルーツをまぶした「シロクマ」と呼ばれるアイスクリームがあるが、傾向としては、ややカッサータに近いものがある(歴史はカッサータの方がはるかに古いがね)。
 最近じゃあ、シロクマはコンビニに置いてあるし――カッサータは、ちょいとしたイタ飯屋で食べられる。夏に向うこの時期、どちらかお試してになってはいかがかな。
  ジェラートは幸福を呼ぶ!
  イラスト 16世紀になってジェラートは飛躍的に進化する。アントニウス・ジマラという、パドヴァ大学の教授※3が、黒色火薬などに用いる硝石を水に入れると、冷却作用があることを発見したんだ。この冷却技術のおかげでバリエーションが一気に広がり、後に泡立てた卵白や生クリームも加えられるようになったワケさね。
 この頃になると、ジェラートはシチリアだけでなく、ナポリやフィレンツェ、ヴェネチアなど、イタリア全土に広がり、さらにはフランスやドイツなどへ渡っていった。
 そんなワケか、イタリアのジェラートには、2つの大きな流派がある。
 1つはもちろんシチリア式のジェラートで、こいつは低脂肪で、空気の泡の入りが少なく固いのが特徴だ。
  写真 もう1つはヴェネチア式のジェラートで、こいつは脂肪分が多く、空気の泡の入りが多いクリーミーなものだ。牛乳を原料にした日本のソフトクリームは、どちらかというとヴェネチアのものに近い。
 シチリアのジェラートの特徴ってえのは、ともかくも固いのに美味しいことだろう。切ってもなかなか落ちないし、溶けにくく粘り強いんだ(何でも、シチリアのジェラートは、天然の海草を使った、ゼラチン質の食材を練り込んであるらしい)。
 脂肪分が少ないので、ヘルシーということに加え、シチリアの豊かな果物類が豊富に練り込まれているのが、何と言っても魅力だな〜。
 特にリモーネ(レモン)やブラッド・オレンジのような柑橘類は、ほかには比べようのない香りがして、本当に美味しい!
 ほかにもフラゴーラ(イチゴ)や、アナナス(パイナップル)、ミックスベリーにチョコレート、ヘーゼルナッツ、イチジクに洋梨・・・おあああ、考えるだけで、よ、よだれが!
 イタリアでは、マフィアのドン風のコワもてオヤジも、ジェラートを食べる時は幸せそうに目を細める(まあ、そいつはあっし、イダテンのゲンさんも同じことだがね)。
 ともかくも、ジェラート抜きでイタリアの食を語れないというのが、あっしの考えだ。
 暑くなるこれからの季節、イタリアン・ジェラートで夏を乗り切ってみては、いかがかい?
 さーて、時間が来やがった。
 それじゃ、お客さん。次回をお楽しみに!
 
   
※3/ 北部イタリア、ヴェネチア近郊にある世界最古の大学。かのガリレオ・ガリレイもここで教鞭をとっていた。
   
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