| 掲載日:2005年7月6日 |
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| ジェラートは1日にして成らず | |||||||
| さて、今回のマンマミーア・イタリアン。前回に続いてシチリアの話だが、今回はちょっくら趣向を変えてイタリアのデザート、ドルチェとやらを取り上げよう。 えっ。イダテンのゲンさんが、甘いもん食べるのかって? そのゴマ塩頭とハチマキに、ドルチェなんて似合わねえだって? どうも、みなさん。文字通りの大甘野郎だね〜。あっしが大酒飲みなもんで、甘いものは食べないと思ってるようだが、ところがどっこい――このイダテンのゲンさん。実は大福&お汁粉に日本酒、ワインにチョコレートと、酸いも甘いも、苦いもしょっぱいも、何でもござれの甘党なんだ。 スイサンドンヤ・ドットコムさんでもケーキ類を扱っているもんで、前から甘味を取り上げてみたいと思っていたもんで、今回は良い機会ってわけだ。 |
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| もっとも、ドルチェにしても、ヨーロッパ菓子というのは奥が深く、とても1回や2回じゃあ、語りつけせない。ドルチェを含めた甘味全般は、いつかまとめて特集をすることにして、今回は、季節がらアイスクリーム・・・イタリアではジェラート(単数形はgelati)と呼ばれる、世界中の誰もが好きなドルチェを中心に、ちょっくらお話しいたしやしょう。 中でもシチリアは、イタリアの中でもジェラートの本場とされる土地――今日は、この甘くて美味しい究極のデザートを堪能していただきやしょう。 |
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| ジェラートが先か? アイスクリームが先か? | |||||||
おっと、いけねえ。今、あっしは「アイスクリームは、イタリアではジェラートと呼ばれている」――なんて言ったけど、実はその表現は正確じゃない。 たしかにアイスクリームとジェラートで、製法や味が違うことはもちろんだが――それ以前に、歴史的に見れば「ジェラートは世界に広がり、アイスクリームになった」という言い方が、正しいのさ。 なぜなら、実は現在のアイスクリームのルーツってえのは、今から700年ほど前のシチリアにあるからなんだ。つまりイタリアのジェラートから、現在、世界で食べられているアイスクリームに変化し、発達していったってワケだ。 |
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もちろん氷菓の類ってえのは、そのはるか昔からあった。山から運んだ氷を洞窟に保存し、夏の暑い時期に、ハチミツや樹液と混ぜて楽しむというのは、昔の権力者なら、みなやってきたことなんだ。かのアレキサンダー大王(BC356〜BC323)などは、エジプト遠征の際、自分で楽しむのを二の次に、雪をかぶせた冷たい飲み物を、兵士たちに飲ませて士気を高めたなんて話がある。また一方で、古代ローマの暴君ネロ(AD37〜AD68)もアルプスの万年雪をローマまで運ばせ、それにハチミツやバラの果汁、フルーツなどを混ぜて※1愛飲していたそうだ。 それにしても甘味が貴重だった上、冷蔵庫もなかった時代に、誰もが真夏に氷菓を手軽に食べられたはずはない。 それを大きく変えたのが、砂糖の伝来だ。 シチリアってとこは、インドからヨーロッパへはじめて砂糖が伝わった地であり、アラブ世界を通じて、さまざまな食材や文化がやってきた場所でもある。 インドを出発したサトウキビは、ペルシャからメソポタミアをわたり、地中海を通じてシチリア島に辿りついた。そして13世紀半ばには、パレルモ周辺に地中海最大の甘蔗(かんしゃ/サトウキビのこと)農場を有するようになったんだ。 現在のイタリア料理では、味付けにほとんど甘味を入れないが、シチリア料理だけはコクづけに砂糖を使う。それには、そんな歴史的背景もあるわけさ。 |
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| アラビアのジェラート | |||||||
それ以前――11世紀頃のアラブ世界には、ジェラートの原型になった「シャルバート」という氷菓があった。名前を聞いて想像がつくように、こいつはシャーベットやシロップの語源になったアラビア語で、「飲む」という動詞のシャリバが変化したものらしい。今でもイタリアじゃあ、シャーベットを「ソルベット」と呼ぶが、その言葉もシャルバートから来ているってわけだ。 これは、バラや麝香(じゃこう)で香味をつけた砂糖水を、山の氷などで冷やしたもので、もっぱら病後や疲労回復のために飲まれていた。 |
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あの「アラビアンナイト」の中でも、語り部のシェラザード姫と不眠症の王様が、しばしばシャルバートを口にする場面が出てくるんだが、おそらくは当時身分の高い人は、たびたび口にして飲み物だったのだろう。今でもイスラム圏でシャルバートは、断食のラマダン時期、日の入りとともに1日の乾きを潤す飲み物として欠かせないという。 さて、そんなアラブの清涼飲料水シャルバートがシチリアに渡った時、レシピにちょっとした工夫がなされた。 それは果汁やワインに砂糖やハチミツを混ぜ、バラなどで香りづけをしたシャルバートを卵の殻に入れ、標高3340mのエトナ火山の万年雪で凍結させるという方法だ。凍ったシャルバートの入った卵は、藁で保温されてパレルモまで運ばれて行ったって寸法さ。 こいつがジェラートの起源と言われている。 もっともこのレシピでできる氷菓は、氷の粒がプチプチして、今でいうとジェラートというよりは、「グラニータ」※2に近いものだそうだが、こいつが当時、たいそうな人気だったことは間違いないだろうな〜。 |
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| シチリア名物カッサータはいかが? | |||||||
もうひとつ、シチリア名物の氷菓のひとつに「カッサータ」がある。当時、11世紀末から13世紀末頃にかけて、十字軍の遠征がなされた一方で、貿易商人たちは、ちゃっかりアラブ世界と交易をしていた。 おかげで両方のルートから、アルメニアの干しアンズや、シリアのレーズンなどのドライフルーツ。レモンの砂糖漬けのレモンピール。ザクロやオレンジ、イチジク、桃、サクランボにピスタチオ、アーモンド、などなど・・・さまざまな食材がシチリア経由でヨーロッパ社会に入ってきたんだ。 こうしたアラブ・サラセン文化のもと、シチリアで創作されたドルチェがカッサータだ。 こいつはチーズ風味のジェラートをベースに、中に砂糖漬けのフルーツやナッツ類をふんだんに練り込んだもの。アラビア語のカサー(大きな深いボール)を語源とするように、大きなドーム型に入れて冷やすのが特徴だ。 日本でも鹿児島には、練乳をベースにフルーツをまぶした「シロクマ」と呼ばれるアイスクリームがあるが、傾向としては、ややカッサータに近いものがある(歴史はカッサータの方がはるかに古いがね)。 最近じゃあ、シロクマはコンビニに置いてあるし――カッサータは、ちょいとしたイタ飯屋で食べられる。夏に向うこの時期、どちらかお試してになってはいかがかな。 |
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| ジェラートは幸福を呼ぶ! | |||||||
16世紀になってジェラートは飛躍的に進化する。アントニウス・ジマラという、パドヴァ大学の教授※3が、黒色火薬などに用いる硝石を水に入れると、冷却作用があることを発見したんだ。この冷却技術のおかげでバリエーションが一気に広がり、後に泡立てた卵白や生クリームも加えられるようになったワケさね。この頃になると、ジェラートはシチリアだけでなく、ナポリやフィレンツェ、ヴェネチアなど、イタリア全土に広がり、さらにはフランスやドイツなどへ渡っていった。 そんなワケか、イタリアのジェラートには、2つの大きな流派がある。 1つはもちろんシチリア式のジェラートで、こいつは低脂肪で、空気の泡の入りが少なく固いのが特徴だ。 |
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もう1つはヴェネチア式のジェラートで、こいつは脂肪分が多く、空気の泡の入りが多いクリーミーなものだ。牛乳を原料にした日本のソフトクリームは、どちらかというとヴェネチアのものに近い。シチリアのジェラートの特徴ってえのは、ともかくも固いのに美味しいことだろう。切ってもなかなか落ちないし、溶けにくく粘り強いんだ(何でも、シチリアのジェラートは、天然の海草を使った、ゼラチン質の食材を練り込んであるらしい)。 脂肪分が少ないので、ヘルシーということに加え、シチリアの豊かな果物類が豊富に練り込まれているのが、何と言っても魅力だな〜。 特にリモーネ(レモン)やブラッド・オレンジのような柑橘類は、ほかには比べようのない香りがして、本当に美味しい! ほかにもフラゴーラ(イチゴ)や、アナナス(パイナップル)、ミックスベリーにチョコレート、ヘーゼルナッツ、イチジクに洋梨・・・おあああ、考えるだけで、よ、よだれが! イタリアでは、マフィアのドン風のコワもてオヤジも、ジェラートを食べる時は幸せそうに目を細める(まあ、そいつはあっし、イダテンのゲンさんも同じことだがね)。 ともかくも、ジェラート抜きでイタリアの食を語れないというのが、あっしの考えだ。 暑くなるこれからの季節、イタリアン・ジェラートで夏を乗り切ってみては、いかがかい? さーて、時間が来やがった。 それじゃ、お客さん。次回をお楽しみに! |
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