| 掲載日:2005年2月1日 |
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| ローマのユダヤ人 | |||||||||
| -----------------------------------------ラツィオ州(ローマ) | |||||||||
さて前回は古代ローマ料理だった、マンマミーア・イタリアンだが、今回は現代のローマ料理に戻ってお聞かせいたしやしょう。今までに何度か話したけど、食い物ってえのは一過性のもの。一度食べてしまうと厳密な意味で、まったく同じものを口にすることは二度とできない。だからこそ、あまりに昔の料理というのは伝わりにくいんだ(なんせ、食材そのものは後世に残らねえからな)。 そんなワケで、古代ローマ料理と現代のローマ料理に、どれほどの繋がりがあるかはわからねえが、どうやらその中で一番、ローマ時代の匂いを残していそうなものがある。 そいつがユダヤ人の料理なんだ。 イタリアのユダヤ人って言うと、シェークスピアの「ベニスの商人」が有名だが、シャイロックのような北部イタリアのユダヤ人は、せいぜい中世頃に移り住んだ新参者。それに対して、ローマのユダヤ人ってえのは、2000年前から住み着いているという、それこそローマの主みてえな連中だ。 今じゃあユダヤ人も混血が進み過ぎて、民族的な意味は希薄になったというが※1、どうやら宗教的に引き継いでいる遺伝子は濃くなる一方で、そのためか大昔から堅持しているものが少なくない。それは食生活にも同じことが言えるわけさね。 |
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余談になるが、以前ユダヤ人の友だちに話を聞いて、あっしは驚いたんだが――ヘブライ語※2ってえのは、モーゼの時代に国を失って数千年――ずうっと死語になっていた言葉なんだそうだ。それが第二次世界大戦の後、1948年のイスラエル建国に合わせて、世界中に散らばっていたユダヤ人が結束し、彼らの神の言葉である旧約聖書をもとに――数千年前のヘブライ語を読み解き、発音などを研究して公用語に定めたというんだ。 それほどにヤーヴェ(エホヴァ)の神は絶対で――熱しやすく醒めやすい、あっしら日本人には想像もできない話だが、そんなユダヤ人の料理は、きっと数1000年前から変わらないものがあるかもしれねえ。もしかして、古代ローマ料理の残り香が感じられるのかもしれないのさ。 |
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| 宇宙に飛び立つユダヤ料理? | |||||||||
ユダヤの教えでは豚肉を食べちゃいけないとか※3、ウロコのない魚(タコやイカなども含まれる)はダメといった禁忌が多いため、連中は独特の食文化を持っている。同じような宗教的な理由があるのか、連中は何でも食材をペースト状にすり潰す傾向がある。食材の原型がわからくなるレシピは、シンプル・イズ・ベストを旨とするイタリア料理と対極にあるもんだが――ただ、さすがにローマのユダヤ料理はそこまでしない。 今でも下町の方へ行くとユダヤとローマの折衷料理を食べることができるが、ユダヤ人も食いしん坊なイタリアの遺伝子と同化したのか、宇宙食みてえなレシピは少ないようだ。 豚肉ならぬ牛肉や鶏肉で作ったソーセージやサラミをのせて、カリカリに焼いたローマ風のピッツァ。アーティチョークやズッキーニの花のフライ。干しダラやチコリとイワシの料理などは、その代表で、どうしてなかなかイケるもんだよ。 ちなみにイタリア料理の話じゃねえが、近頃、都内などで見かけるニューヨーク・デリは、聞くところによるとユダヤ料理が原型だそうだ。こいつは、お総菜にサンドイッチやサラダなどを合わせて食べるカウンター形式で、若いOLに人気のレストランさね。 言われてみれば、たしかにニューヨーク・デリにはペースト状の食い物が多く、経営者もユダヤ人が多いという。もしかすると、宇宙食もユダヤ人の考案なのかもしれねえが・・・いやはや、あのペースト食を形を変えただけで、若いOLに売り付けちまうお手並みというのは、さすがは世界の大商人だ。ちょっくら、あっしらも見習いてえもんさね。 |
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| ローマのイースターエッグ | |||||||||
ユダヤ人の食文化として、いまでもローマに残されてる代表は、復活祭(イースター)の食事だろう。なに、イースターといえば、イースターエッグだろうって? そう。春のイースターに卵料理は必ず出されるメニューなんだ。 それに加えてアバッキオ(仔羊の肉)をあしらった料理――これが春の定番料理なんだが、イースターに卵と羊を食べる習慣は、もともとユダヤ教のものだそうだ。そもそもキリスト教ってえのは、ユダヤ教の弟分だから、ユダヤの慣習が残っていたとしても何の不思議もないわけだがね。 ともかくもローマでは卵料理が出されることが多い。ローマ時代からの人気の食材であることに加え、イースターの主役ということもあるんだろう。 リストランテの前菜でも、たいていフリッタータ(オムレツ)が出されるし、結婚式でも卵料理は定番メニューだそうだ。オムレツはプレーンのものより、炒めたタマネギや茹でたジャガイモ、トマト、サラミ、ペコリーノチーズや魚介類など、具を入れて出される場合が多い。これはシンプル好きのイタリア人にしては意外だが、冷まして出すことが多いので、味を強くしておく必要があるからだ。 オムレツって言葉は、もともとイタリア語だそうで、こいつは「卵にはじまり、リンゴに終わる」と言われた古代ローマの人気メニュー、ハチミツと卵のオムレツ――オヴァメリータ(ovamerita)に由来するらしい※4。 ハチミツ入りのオムレツがどんな味がしたのか知るよしもないが、当時はゆで卵にオリーブを添えたシンプルなレシピが多かった中で、オムレツ(現在のイタリアでフリッタータと呼ぶ)は変わったメニューとして喜ばれたのかもしれないな。 |
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| ローマに「パスタの三位一体」あり! | |||||||||
内臓料理やユダヤ人の料理のほかに、ローマ料理の定番といえば、パスタ料理がある。パスタはイタリア人なら当たり前と言いたいところだが、前にも申し上げた通り、連中が持っているデンプン類の選択肢は広い。 パンも食べるし、米も食べる、ピッツァも食べる。ポレンタというトウモロコシの粉を使った料理。パスタに使うデュラム小麦以外にも、そば粉に大麦、スペルト小麦、ジャガイモを練り込んだりと、傍若無人なバラエティなんだ。 そんな中で、ローマっ子は1日に1回はパスタを口にするという。星の数のようにある、イタリアのパスタだが、ローマっ子は生パスタでも乾燥パスタでも 小泉さんじゃないけれど、ローマには「パスタの三位一体」と呼ばれるものがあるんだそうだ(おっと、三位一体って言葉はあちらが本場でい! 失礼いたしやした)。 そいつはブッカティーニのアマトリチャーナ。つまり太めのロングパスタにトマトソース。 スパゲッティ・カルボナーラ。ベーコンと生クリーム、卵黄、チーズのスパゲッティ。 そしてフェットチーネのスーゴ。平パスタと煮込みソースの3つなんだそうだ。 まあ、これは江戸前寿司の三位一体、マグロ、コハダ、アナゴみてえなもんなんだろう。あくまで地元ローマっ子が言う3点セットで、ツーリストとしてイタリアを訪れた時に、よく食べるものとはちょっくら違う。 ローマのリストランテに多いパスタの代表は、あっしにとってはペンネ・アラビアータだ。 日本でも最近は人気の一皿だが、ペン先型をしたパスタに、トマトソースをオリーブオイルとニンニク、ペペロンチーニ(トウガラシ)で炒めたソースで和えた、シンプルなパスタだ。 シンプルとは言っても、トウガラシの辛みやニンニクの匂いがキツいので北部の人は好まないそうだがね。あっしには、このあたりの濃いめの味ってえのが、どうやらローマの味なような気がしてならねえのさ。 さーて、時間が来やがった。次回からは、あっしがいちばんイタリアで好きなナポリ料理をお聞かせするよ。ガラは良くねえが、食い物はやたらと旨いところだ。 それじゃ、お客さん! 次回をお楽しみに! |
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