| 掲載日:2004年8月20日 |
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| 郷土料理は地図と合わせてご覧くだせえ! | |||||
さて今回から何度かに分けて、イタリア各地の郷土料理についてお聞かせいたしやしょう。 |
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| バーニャ・カウダはデートにご法度? | |||||
| ------------------------------------------ピエモンテ州 | |||||
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てなもんで、最初は北イタリアから行ってみよう。前にも話したが、日本と同様でイタリアもつい最近までは貧しい国だったわけだが、北イタリアの料理には、そんな生活の名残をルーツにしてるものが多い。 蕎麦や栗、トウモロコシの粉を小麦粉に混ぜたパスタはその典型だが、最近アンティパスト(前菜)で人気のバーニャ・カウダなんてえ一品も、もとは農村料理だった。 バーニャ・カウダは、もとは北部ピエモンテ州――アルプスのお膝もとの田舎料理で、国境をスイスに接しているせいか、チーズ・フォンデュとよく似た食べ方をするのが特徴だ。 フォンデュとの違いは、パンの代わりに温野菜――チーズの代わりに、アンチョビーとニンニク、生クリームをペースト状にしたソースを使うことだ。 温野菜をアンチョビーソースにつけて食べる、いわばベジタブル・フォンデュと思えば間違いない。 温野菜はジャガイモやタマネギ、キャベツやセロリ、カリフラワー、パプリカ、フィノッキオ(※1)、カルチョッフィ(※2)など、オーブンに入れたり茹でたり――加熱しても崩れない野菜が使われる。 冬の寒さが厳しいピエモンテ州で、タップリのソースが入った熱々の鍋を家族で囲み、大勢で食するものが、もともとのバーニャ・カウダだったんだ。 ただ近年こいつは、職場に行かない金曜か土曜に食べるのが通例になっている。なぜって、ソースにニンニクを大量に使うからさね(あっしは365日、お客さん相手の日もかまわずニンニクを食べまくっているがね)。 |
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| ミラノ風カツレツの実力やいかに? | |||||
| ------------------------------------------ロンバルディア州 | |||||
すっかり日本でもイタリアンが定着した感があるが、そのわりに「ミラノ風カツレツ」を看板にしている店は少ない。理由は簡単で、日本のトンカツがあまりに美味し過ぎるんだろう。どうしても比較してしまうからな。あっしの知り合いの学者先生は「世にカツレツは数あれど、ミラノ風カツレツも、ウィーンはハプスブルグ家・御用達(ごようたし)のウインナ・シュニッツェルも、トンカツの旨さには遠く及ばない」と、常々仰っている。 だが、実際にはトンカツとミラノ風カツレツというのは、実は似て非なる料理なんだ。比較すること自体に少々無理があると思うし、別の料理だと思って食べると、それはそれで旨いもんだ。 カツレツはイタリア語では「コトレッタ」と言うが、ずばりミラノ風カツレツが生み出されてできた言葉だそうだ。 日本なら豚はトンカツ、鶏ならチキンカツと呼ぶが、イタリアの場合、どんな肉でも「コトレッタ」と呼び、場合によっては野菜を使ってもOKだそうだ。 定番は豚ではなく、くせのない仔牛のロース肉が主流なことも、トンカツとは違う料理であることを物語っている。 イタリアの一大経済拠点・ミラノを擁するロンバルディア地方も、昔は貧しかったためか、肉は骨つきのまま、薄く薄くカミカツのように伸ばし、卵とパン粉をつけて揚げる。こいつはカツレツというより、パリッとスナックを食べるような味わいがあるんだ。 勘の良い読者のみなさんはお気付きかもしれないが、ミラノ風カツレツとウィーン名物ウインナ・シュニッツェルは、どうも兄弟にあたるらしい(ま、場所も比較的近いことだしな)。 呆れかえったことに、ミラノっ子はウィーンが真似たと言い、ウィーンっ子はミラノが真似たと言い、互いに一歩も譲らねえそうだ。まあ、広島・呉市と京都・舞鶴市の「肉じゃが・元祖論争」みてえなもんで――別にどっちがどうでもいいじゃねえかと思うけど、人間てえのは、どこも同じようなことで張り合うもんさね。 ちなみにウインナ・シュニッツェルは、ミラノ風カツレツにくらべて、やや厚め。ミラノのそれが軽やかな食感なのに対して、ウィーンの方はたっぷりしたボリューム感を好む傾向があるようだ。 |
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| 北イタリアのおふくろの味・ポレンタ! | |||||
| さーて、あっしはお客さんがたに、ちょっくら謝らねえといけねえ。 前にポレンタのことを「イタリアのもんじゃ焼きみたいなもの」と説明したが、実際にはかなり違ったものだったんだ(たまたまあっしが食べたポレンタが、もんじゃに似た食感だったもんでな・・・)。 ポレンタってえのは、トウモロコシの粉をブイヨンなどの出し汁で煮込んで食べる、北イタリアの主食のひとつだ。粉を出し汁で溶くところまでは、もんじゃもポレンタも同じだが、そこからのレシピは全然違う。 ゆるめにしてお粥状で食べるか、固めに作ったものを冷ましてからフライパンで焼いて食べるかは、人によってまちまちだそうだが、実はこのポレンタ――以外に手間のかかるものなんだそうだ。 グラグラと沸騰した湯にポレンタに使うトウモロコシの粉を入れ、木べらで常にかき混ぜながら、最低40分は煮込まないと美味しくならない。手間がかかるわりに地味な料理なんで、日本のリストランテはもちろん、イタリアでも北部の限られた店に行かないと旨いものにはありつけないという。 ポレンタのルーツは、プルテスという小麦粉を粥状に溶いた、古代ローマの調理法に遡る(プルテスは生パスタのルーツでもあるんだがね)。 中世以降――ポレンタのご先祖さまは、大麦粉やキビ、粟、蕎麦などを何時間もかけて煮込んだものへ変化し、18世紀にアメリカ大陸からトウモロコシがやってくると、はじめて現在の形になったそうだ。 まあ、こいつは聞いての通り、良くもわるくも貧乏人の料理だ。 南イタリアの連中は、ポレンタ食いの北の連中を「ポレントーネ」といって馬鹿にするんだが――北の連中にとってポレンタはまさにおふくろの味、マンマの味ってワケさね。 |
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| 体にやさしいマンマの味 | |||||
| 不思議なもんで、どこの国や地域でも、おふくろの味ってえのはだいたい貧乏人の料理が多い。なんせ母親ってえのは、限られた予算の中で、子供や亭主にどうやって、安く美味しく滋養のあるものを食べさせるか、を考えないといけない立場にある。 そんな意味で言えば、食の本質はおふくろの味・マンマの味にありってトコだろう。加えて言うなら、それは貧しさの中から、どう食べるものを工面して工夫するかが「食べる」ことの原点でもあるってことさ(その一方で、金に糸目をつけず、素材を吟味して生まれた宮廷料理などの存在も忘れちゃならねえ。イタリア料理も日本料理も、その両輪がきちんと揃っているところが素晴らしいのさ)。 貧乏から生まれた料理というは、飽きずに毎日食べられて、体にも負担をかけないという良さがあるんだ。 もっとも、よく言う「粗食は長生き」というのは、「年をとったらカロリーを摂り過ぎない」という意味で、やはりバランス良く栄養を摂取することは必要なことだ。 江戸時代に脚気が流行したように、イタリアでも19〜20世紀初頭には、ポレンタだけ食べていた庶民にペラグラ病という皮膚病(ビタミンB3に属する栄養不足が原因)が流行したそうだ。 余談ながら、脚気が白米だけの偏った食事(ビタミンB1の欠乏)からくるように、ペラグラ病はトウモロコシだけ食べていると、なりやすい病だそうで・・・噂によれば北朝鮮の収容所では、現在でも当たり前の病気だと言われている。 今ではさすがに北部でも、ポレンタだけ食べているイタリア人はいないらしく、肉やサルシッチャ(イタリアのソーセージ)、ゴルゴンゾーラやフォンティーナなどのチーズと一緒に食べるのが一般的だ。 まあ、何事もバランスってことだが、イタリアンの場合は肉だけ、魚だけ、野菜だけといった一品に偏らないところが栄養的にも優れていると呼ばれる由縁さね。 さーて、時間が来やがった! 今日は麻布十番にでも出没して、バーニャ・カウダの旨い店でも物色するかな。 それじゃ、お客さん! 新カタログともども、次回をお楽しみに! |
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