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水産物 医食同源
マンマミーヤ! イタリアン!っと、きたもんだ
掲載日:2004年6月23日
 まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!
 先日、あっしはお客さんに用事があって、新宿・歌舞伎町に行ってきたんだが――今、あそこの噴水に、高さ12mというどでかい木馬が置いてあるんだな。知ってたかい? 何でも、ハリウッドの大作「トロイ」で使われたセットだそうだよ(新宿歌舞伎町シネシティー広場・6月下旬まで展示)。
 いや〜、驚いた、驚いた! ありゃ、入場料取って見せてもいいほど立派な大きさだね。あっしは、ここ何年も映画館に足を運んだことがなかったんだけど・・・木馬を見た勢いで、お客さんと映画の「トロイ」も観ちまった。
 たしかに同じ木馬が映画に使われていたし、思ったより面白かったなあ。ま、たまには映画も良いもんさね。
 伝説だと『トロイの木馬』は焼けた舟の廃材で作られたそうで、あっしもすっかり歌舞伎町の木馬も流木で作ったのかと思ったんだが――知り合いのディスプレー屋さんに言わせると、あれはプラスチック素材で出来てるそうだ。FRPというサーフボードやヨットと同じ、丈夫なものらしやね。
 プロが見ると、それは古く見せるためのペンキの跡でわかるそうなんだが、あっしなんかにはよくわからなかったな。まったく上手く作るもんさね。
 ディスプレイ屋さんの話だと、その木馬を自分とこで作ると、3000万円は取らないとワリが合わねえシロモンだそうだ。
「えー、そんなにかかるのかい?」って聞いたら、「だって展示会の工費を考えれば、そんなもんでしょう」と言われちまった。うーん。そういえば、その通り。たしかに展示会のディスプレイ料て、馬鹿にならねえんだよな〜。
   時代遅れの言葉でも・・・中身は人気の「イタめし」でい!
 

 展示会といえば――7月21日から23日まで、有明のビッグサイトにおいて「シーフードショー」が開催される。
 あっしのとこは、直接は出店しないものの、それに追われておおわらわさね。ま、お客さんがたもお時間があったら、ぜひお顔見せておくんな。面白いし、色々食えるし、そら勉強になるよ!
 さてさて今回から何度かに分けて、前から話すと言っていた「イタめし」についてお聞かせいたしやしょう。
 なに、ゲンさん。今どきの若いもんはイタめしなんて言わないってか? 
 うるせいやい! 別にいいだろーよ。どうせ、あっしは孫もいるジイさんなんだからよ。
 それに、はばかりながら、このイダテンのゲンさん――「イタめしは死語」とかおっしゃる、そこいらのお姉さんお兄さんより、よほどイタリア料理は知っていて、食べてるつもりだよ。
 スパゲッティといえば、ケチャップ入りの弁当ナポリタンしかなかった時代からイタリア料理を食べ続けてる、あっしイダテンのゲンさんの話。どうか聞いておくんなせえ。

   なぜ日本人はイタリアンが好き?

 

 みなさんもご存じのように、ここ10数年ほどの間――雨後のタケノコみてえに新しいイタリア料理店がオープンしてきた。
 お台場や汐留のように再開発されたところに、有名イタリア料理店は欠かせない客寄せの切り札になっている。また、逆にアクセスのよくない地域でもイタリアンは確実に増えてきているようだ。
 昨年のシーフードショーでもイタめしメニューは、さまざまなブースで試食されていたし、それらアイテムを使って多くのチェーン店が、より安価なイタリアンをお客さまに提供している。
 どうして、日本にこんなにイタリア料理店が増えたんだろう?
 あっしに言わせると、その理由は簡単だ。
 イタリア料理は日本人の舌に合うんだよ!
――なに? ゲンさん、そりゃあ何も言ってないのと同じだって?
 お客さん、話はおしまいまで聞きなって。これからなぜ、イタめしは日本人の舌に合うかを説明するんじゃねえか。
 イタリア料理ってえのは素材をあまりいじらないで、シンプルなレシピを基本にしてるだろ? 日本料理も素材の持ち味を生かすことをもっとも大切にするわけだが、そのことがわれわれの舌にマッチするってことなのさ。
   イタリア料理の真髄、それは「シンプル・イズ・ベスト」
   イタめし人気のきっかけは、ここ20年くらいで海外旅行が安く簡単になり、本場イタリアの味を覚えて帰る人が多くなったことがある。
 ひと昔前の日本では、ピザにしてもナポリタンにしても、アメリカ経由でやってきたレシピが、イタリア料理だと誤解されていたフシがある。
 アメリカ、特にニューヨークはイタリア移民が多いから、イタリアンをベースにした料理がよく食べられる。ただ、そいつは缶詰やケチャップ、それにハンバーガーなどのファストフードと合体した、アメリカ人の好みに合わせ変化していったメニューが中心だ。
 言うまでもなく、アメリカ人が好む四角い宅配ピザと、ナポリなどで食べるピッツァでは別の食物だ。イタリア人は決してピッツァやパスタにタバスコをかけないし、ナポリタンにトマトケチャップを使うことはない。
 あっしがはじめてイタリアに行った20数年前――ナポリ中央駅そばのベルガンティーノで食べたスパゲッティ・ポモドーロ(トマトのスパゲッティ)にびっくりした覚えがある。
 それまでイタリア料理というのは、ハンバーガーとかフライドポテトのように、脂肪分が多く油っこいもんだと思っていたのが――いやはや、そのトマト・スパゲッティの何と軽やかでやさしい味だったことか!
 それはニンニクとバジル、トマトをオリーブオイルで炒めたものを、さっくりパスタと和えただけのシンプルな料理だったが、あっしはつくづく『食は素材にあり』と思ったもんだ。
 イタリア料理の真髄が「シンプル・イズ・ベスト」とする点――それこそが、日本におけるイタめし人気、最大の理由だとあっしは踏んでいる。
 ともかくも、このシンプルな味を覚えた日本人が増えたってことさね。
   イタリアにはイタリア料理がない?
   ところが、これだけ日本でイタリア料理が人気だというのに、あちらイタリアに行くと日本料理店というものを見つけるのに苦労する。
 パリやロンドン、ニューヨークはもちろん、欧米のちょっとした都市に行くと、今や寿司屋は珍しくない存在なのに――ミラノやローマあたりでも、寿司屋なんて探さないと見あたらねえ。
 日本人もイタリア人も「自分の国の料理がいちばん美味い」と思っている点は一緒だが、東京が世界中の料理が食べられるのとは対照的で、こと食のバラエティについちゃ、およそイタリア人ほど保守的な人種はいないだろう。
「イタリアにイタリア料理はない。あるのは郷土料理だけ」
 これはよく言われることだが、実は本国においてイタリア料理というのは、ヴェネチア料理やエミリア・ロマーニャ料理、トスカーナ料理、シチリア料理といった、郷土料理の総称なのさ。
 まあ日本だって、沖縄のゴーヤーチャンプルと、秋田のきりたんぽみたいに、北と南で食べるものは全然違う。ましてや、イタリアというのは150年前ガリバルディが統一するまで、小国の集まりだったんだから、そいつは当たり前の話なのかもしれねえな。
   料理の決めてはマンマの味付け
   誤解をおそれず言えば、こと味覚に関してイタリア人ってえのは、マザコンで田舎者の集まりなんだ(もちろん、こいつはわるい意味で言ってるんじゃないよ。身内にイタリアの方がいらっしゃったら、そう言っておくれ)。
 イタリア人ってえのは、自分ンちのメシがいちばん美味い・・・つまりマンマの料理こそが最高だと思っているんだ。これは間違いない。
 また、同じイタリアの中でも、アルプスのふもとに暮らしている連中は、あまりトマトを食べないというし、南の連中は北で食べられているニョッキ(強力粉にジャガイモなどの野菜を練りこんだパスタ)を、しみったれの食い物と言って食べようとしない。
(ま、こいつは日本でも関西の人が、東京のうどんをドブ水というのに似ているがね)。
 それくらい食に保守的なイタリア人だから、町中に外国料理の店は少ない。また、小さな町に行くと、外国料理はおろか、郷土料理以外の店がなかったりするのさ。
 イタリア本国では日本料理店はもちろん、世界に冠たる中華料理さえ少なかったりするのは、そんなわけなのさ。イタリア人は外国に行くと、食べ物が原因でホームシックになる人も多いそうだよ。
 ところで、このマンマの味ってえのは、近年注目されているスローフードの考え方につながるものだ。
 日曜日に手打ちのパスタを作ったり、たっぷりと太陽を浴びて赤くなったトマトを、庭の農園からとってきたり、その庭で育てた鶏をつぶしたり・・・。
 まあ、毎日そんな食事はできるはずもないが、たまにはそんな愛情のこもった「おふくろの味」とやらを味わうというのもわるいことじゃねえやな。
   トマトなくしてイタめしは語れず
   前にも話したが、イタリア料理において、トマトってえのは意外に新参ものだ。だがその立場は、日本における米の存在に匹敵するかもしれない。
 トマトの原産地は南米のアンデスだ。それがしだいにインディオたちの移住によって、アンデス高原から中央アメリカやメキシコに伝播した。
 その後、17世紀の大航海時代――コロンブスだのマゼランだのといった山師たちが、ラテンの熱い血にまかせて世界中を闊歩(かっぽ)していた時期に、イタリア人たちがメキシコ周辺で見つけて持ち帰ったのが、現在のトマトだそうだ。
 日本でも江戸時代、観賞用に赤茄子と呼ばれて入ってきたそうだが、栽培されるようになったのは明治以降だ。それに比べると、イタリアのトマトは、まるでローマ時代からいるようにデカい面してる。イタリアの土地と、彼らの味覚に合ったんだろうな。
 トマトの原種は、痩せて乾燥した土地柄を好む。南イタリアは高地ではないが、アンデスにやや近い環境で、そのためか南がおもなトマト生産地になっている。
 南イタリアを旅すると、白い石灰質の大地と、そこのポツポツと生えたオリーブの木々がどこまでも連なり延々と広がっている。もともとが貧しい土地がらなんだろうな。
 ミラノあたりでは「ローマを越えると、そこはアフリカ」なんてことを言うくらいで※1、そのあたりが豊かな北と貧しい南が分かれているモトなんだろう。
 ただ、あっしの感じではミラノあたりは高いだけで、さほど旨いもんはない。食い物の美味しいのは、何といってもナポリを中心とした南ってえのが、あっしの持論なんだ。
 まあ、これは好みということに尽きるかもしれないが、ともかくもトマトとオリーブがイタリア料理のベースだというのは、誰も異論のないところだと思うよ。
 トマトはイタリア語で、黄金のリンゴを意味するpomodoro(ポモドーロ)だ。タマネギのように(玉+葱)、2つの意味をかけ合わせた単語は、歴史が浅いしるしだが、その意味を知るかぎり、いかに彼らにとってトマトが大切な食べ物か、おわかりになるだろう。
 
※1筆記者注= もとはナポレオンのスペイン遠征に言った言葉、『ピレネーを越えると、そこはアフリカ』によると推測される
   トマトが赤くなると医者は青くなる
   イタリアでは「トマトが赤くなると医者が青くなる」という言葉があるほどで、その健康効果には素晴らしいものがある。
 トマトにはカロチンという黄色い色素と、リコピンという赤い色素が含まれているんだが、これら2つの色素が作る赤い色に、健康効果の秘密があるそうだ。
 まずカロチンは動物内の体内でビタミンAに変化する性質を持っている。血行の源になったりするんだな。
 またこのリコピンが注目の抗酸化物質で、人体に悪影響をもたらす活性酸素を退治するというんだ。最近の研究では消化器系のガン抑制に、大きな力を発揮するそうで、トマトを多く摂取するほど消化系のガン発生率が低くなるというデータもあるそうだ。
 リコピンは熱による破壊がされにくく、また油と一緒に摂ると吸収も良いとかで――そんな意味でもイタリア料理というのは、ヨーロッパの料理としてはダントツの健康効果があるといって良いかもしれない。
 さーて、時間が来ちまった。今日は広尾のパルテノペあたりで、赤ワインでもガブ飲みしながら、ナポリ風のピッツァでもいただくとするかな。
 じゃあ、お客さん! 次回をお楽しみにな!
   
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