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水産物 医食同源
食いねぇ、食いねぇ、寿司食いねぇ!(寿司その二十、シャコ編)
掲載日:2004年1月30日
まいど、まいど。イダテンのゲンさんです!
どうでえ、お客さん。
世の中ちょっくら景気は良くなっているようにゃあ思えないかい?
こいつはそんなに気のせいじゃねえんだ。あっしのお客さんでも、買ってくれるモンが少し高いものを選んでくれるようになったみてえでな。ま、良い傾向だよ。
依然、余談を許さない厳しい状況ではあるんだろうが、多少なりとも光明が見えてきたのは歓迎しなくっちゃいけねえやな。
一方で、BSEや鳥インフルエンザなんかで、食の安全性が取りざたされているのは、あっしらとしちゃ気をシメてかねえといけねえ寸法だ。
先日テレビでは、熱帯魚にイソギンチャクの遺伝子を組み込んだ「光るサカナ」が、アメリカでペットとしてバカ売れしてるニュースをやっていたが、まったく冗談じゃねえやな。あんなモンが河川に放流されたら、生態系がどう変わっちまうか、考えただけでも寒気がすらあ! 長い目でみりゃあイラクの派兵より、そっちの方がよっぽど問題さね。
ともあれ、折角持ち直してきた景気だ。
こいつあ、春から縁起がいいや! ・・・ってんで、この機にますます旨いモン、お客さんのみなさまにご提供するから、どなたさんも楽しみにしておくんなせえよ!
   シャコは英語で「ガレージ」かい?
 

さて、ご好評いただいた寿司のシリーズも20回目。とりあえず今回でひと締めということにいたしやしょう。まあ、寿司の話がこれで終わるワケじゃあねえ。天ぷらだの中華だのと、聞かせ倒したい他の話もあることなんで、とりあえずの打ち止めだ。
そんなわけ今回は最終回だからって仰々しくやらず、脇役のシャコの話でもいたしやしょう。

そうは言っても、こいつも煮物ネタの中じゃあ、なかなかハバを利かせた渋い役者だ。
長谷川町子先生の「いじわるばあさん」じゃあ、外人に「シャコは英語でガレージ」なんて教える話があるが、あっしのダジャレじゃあるめえし、英語じゃそんな呼び方はしねえ。
まあ、実際に寿司屋さんなんぞは、隠語でガレージなんて呼び方をするところあったりするわけで・・・あっし同様のダジャレ親爺でいっぱいの世界ってコトかもしれねえな。
シャコは英語じゃあ、マンティス・シュリンプ(mantis shrimp)というそうで、直訳するとカマキリエビだな。名前を聞いただけで、そいつを食べようなんて気がそがれちまうネーミングだが・・・実際、シャコを捌く前の姿を見たら、味覚音痴のイギリス人じゃなくとも、食べたいなんて思わないかもしれないな。

   シャコは海の掃除屋さん?

 

江戸中期の医師・寺島良安が記した「和漢三才図会」という書物によれば、シャコは
「姿は蜈蚣(ムカデ)の如く、尾は僧帽の如し。青竜蝦とも呼ぶ」とある。
ムカデという表現が正しいとは思えないが、言い方はわるいが、姿からするとフナムシなんぞに似てないこともない。
英語のマンティス・シュリンプという名の通り、本当にカマキリみたいな前脚を持っていて(こいつは寿司屋仲間じゃ、シャコバサミなんて呼ぶ)、それで小魚やエビなんぞを素早くすくいあげるように捕らえる習性があるんだな。
アサリなんぞは「肘打ち」エルボーで割って食べちまうってんだから、相当に強靭な生命力を持った生き物なことは確かだな。
俗に連中は海の掃除屋さんと、あまり嬉しくないイメージを持たれているわけだが、なに――江戸時代だって、カニはドザエモンを食べるって嫌われていたんだから、シャコだって同じことさね。
それに海の掃除屋さんってイメージは、シャコにとっちゃ有難くない称号さ。実際のシャコはもう少しきれいなもんなんだよ。
   シャコはじっと我慢の子であった
  シャコはエビと同じ節足動物門・甲殻綱に属した動物だ。ややこしい言い方をすると口脚目(こうきゃくもく)シャコ科として、エビとは区別されている。
エビに似ているが幅の広い尾を持ち、これで泥や砂に潜り餌がやってくるのをじっと待つという寸法さ。餌は主にエビやゴカイだが、鎌のような前足で何でも食べる。生息場所は水深10mくらいのところで、泥や砂の多いところで、日本全国の沿岸部から韓国、台湾、中国あたりまで分布している。
昔は東京湾では、横浜の子安湾がシャコの名産地だったが、今は場所が移り、横浜金沢区の八景島で漁がなされている。また、同じ東京湾では千葉県富津で、底引き網がなされてるきりだ。
これは漁獲量が減ったということもあるが、あまり汚れた海で採れたシャコは勧められないということもあるだろう。
   やっぱりシャコだって、きれいな海が好き?
  実際にシャコは生命力あふれた生き物だ。
シャコは多少の水質汚染は平気で、ほかの水棲動物が逃げ出しても、こいつだけは平気で居座ってる剛の者なんだ。滅多のことじゃ動じたりしねえ。
だが、汚れた海の成分を吸収したシャコってえのはどうもねえ・・・。
あれは、昭和40年頃の話だったか。東京湾の水質汚染が深刻だった頃、神奈川県は金沢沖で白いシャコが採れたことがあったそうだ。
見たとこ弱ってる様子もなくピンピンしてるんだが、茹で上げても、あのシャコ特有の紫がなく、ねぼけた黄色にしかならなかったというんだ。
甲殻類ってえのはエビでもカニでも、アスタキサンチンという色素を持っている。こいつが加熱されると赤くなったり、シャコのように赤紫に変化したりする。だが、この白いシャコは、その色素が減少しちまったってワケさね。
調べてみると脂肪酸が変動したり、コレステロールが減っちまったりと、人間ドッグに入ったお父さんだったら有難い話だろうけど、シャコにとっちゃ自然の状態とはほど遠い迷惑な話だったワケだな。
シャコちゃんたちは、魚貝の死骸を食べて成長するだの、ヘドロが大好きだのと、いわれのない誤解されることが多い生き物だが、そらそんなことはねえ。
ブタが清潔好きなのと同様で、シャコだって海が良い状態であるに越したことはねえ。
こいつらを海の中で生きてる姿を見てみい。
グレーがかった緑の体をしていて、尾や手足の部分にかけては江戸紫色をした美しい斑紋が見られる。意外や意外だが、そらなかなかどうしてきれいなモンだよ。
人によっちゃあ、クルマエビにひけを取らない美形なんて言う人もいるが・・・そいつは、ちょっくらほめ過ぎだろうが、シャコに言われる汚名を返上したいってモンさね。
   スイサンドンヤ・ドット・コムさんのシャコも旨いぜ!
 

シャコの旬は5〜6月と言われるが、冬場でもそら盛んに採れる。
シャコは水質の変化に強いといわれるが、さっきも申し上げたように、そら個体によって旨い不味いは大きく違う。
一番、旨いとされるのはお腹に卵を持っているもので、寿司屋仲間じゃ「カツブシのあるやつ」っていう、卵巣を持ったシャコちゃんだ。
シャコの卵巣は身肉の中に棒状に入っている。色も鰹節と似た茶褐色なんで、「カツブシ」なんて呼び方をするってえワケだ。
こいつらは寿司屋に入荷される時は、すでに茹でられた状態で入ってくる。
水揚げされたシャコはすぐに仲買人の手に渡り、生きてるうちにグラグラ煮えたぎった大釜に入れられ、さっと茹でられるんだ。
茹でられたシャコは頭とシャコバサミを除き、殻を剥いて身肉だけを取り出すのさ。
薄紫をして、光沢よし、身肉に張りがあるものが良品とされている。
ちなみにスイサンドンヤ・ドット・コムさんのシャコは、この条件をすべて満たした良品さ!
中国にて活きた原料を使用して、1回凍結にて製品加工した商品なんだ。 今まで海外から輸入されてきた寿司ネタ用シャコとは、何よりも旨味が違うもんで、流水解凍でそのままいただけやす。 どうぞ食べておくんなせえ。

  シャコの爪肉
  ところでシャコの加工の副産物として、爪肉なんてえのがあるのをご存じかい?
こいつはシャコバサミの殻のなかの肉のことなんだ。カニのツメならわかるけど、シャコの小さな爪肉だけを取り出すなんて、手間ひまがかかりすぎて、割に合わないが、これはなかなかの珍味だ。
もともとは子安の漁師が、家族のおかずや、酒のつまみに食べていたものらしいが、とにかく、1匹から小さな爪肉が2つしか取れないもんで、幻の味になってるもんだ。
シャコそのもの味よりはもっと淡白で、酢のものやみぞれ和えといった酸味とよく合うもんだが、今じゃあ、やってるとこがあるかどうか・・・。以前は神田に一軒、出してる店はあったけど、店主が3代目に変わってからやめちまったみたいだな。
みなさんでシャコの爪肉をお出ししてる店、ご存じの方がいたら、どうぞ教えてくんなせえ。
  シャコの煮汁漬け
  シャコってえのは、寿司屋さんにとっちゃ有難えネタでもある。
なんせムキのまま、上に煮ツメを塗ればそのままお出しできるんだからな。スイサンドンヤ・ドット・コムさんのシャコみたいな良品ならなおさらさ。
ただし、そんな手間ひまをかけないやり方を潔しとしない寿司屋さんは、ほかに工夫をしようと考えているようだ。
とは言っても、タコのように生から煮るわけにはいかないネタなもんで、「漬け込み」という方法になってしまうようだ。
漬け込む煮汁は、店によって色々やり方はあるようだが、老舗のあっしの友人だと、醤油6にみりん4、それに砂糖を適量入れて煮込む。
アナゴの煮汁と違って、酒や水は入れないのが原則で、トロっとしてきたら出来上がりさ。濃いめに煮詰めた汁は、よく冷ましてからシャコを入れ、冷蔵庫で3〜4時間漬け込む。これはハマグリを漬け込む時とよく似ているんだ。
  蝦蛄、青竜、海鰕、管蝦、石楠花蝦!
  シャコってえネタが煮物としてもてはやさるようになったのは、そんな昔のことではない。少なくとも、大正時代くらいまでは、寿司屋は見向きもしなかったネタなんだ。
カニやエビと違って、茹でたシャコは多少腐敗が進んでもわからないので、昔は食中毒を起こす人がいたんだな。
こいつは、昔カツオやマグロに毒があったと信じられてきた迷信と同じこと。
寿司屋が好んで出すようになってから、シャコの人気が高まってきたわけだ。
あんまり高級品として扱われたことがないせいか、シャコには様々な当て字や名前がある。
シャコは漢字で蝦蛄と書くが、茹でた時の色が石楠花(しゃくなげ)に似てることから、石楠花蝦なんて当て字もある。
ガサエビなんて別名に比べると、実に優雅なもんだが、ほかにも中国では青竜、海鰕、管蝦なんて字が当てられてる。
方言となるとこれが豊富で、オニエビ、ボロシャク、ゼンノミ、ガサエビ、シャッパ、など、聞いただけじゃ何のことだかわからないものも多いみてえだ。
さ〜て。長いこと続いた寿司の特集も、これでひと区切り。回転寿司の話や外国の寿司の話もしたかったが、それはまた別の機会にしよう。
次回からは、少し魚の雑談をしたあとで、また新シリーズに突入だ。
それじゃ、お客さんも風邪やインフルエンザには気をつけておくんなせよ!
次回をお楽しみに!
   
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