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水産物 医食同源
食いねぇ、食いねぇ、寿司食いねぇ!(寿司その十八、イワシとアジ編)
掲載日:2003年12月26日
まいど、まいど。イダテンのゲンさんです!
いや〜、お客さん。年の瀬も押し迫ってくると、町中も正月の準備だってんで、毎年毎年、同じような雰囲気に包まれるよな〜。
けど、風景や雰囲気は似ていても、時代は確実に変わってきている。「行く川の流れ」じゃないけど、年の瀬も雰囲気が似てるだけで、同じ年なんてありゃし ねえってことさね。
年食ったせいか、あっしは最近よく思うんだが、世の中ってえのはずっと同じであり続けることはない。知り合いの坊主に言わせると、それを「無常」って言 うそうだ。
「無常」なんていうと、「無情」と同じ発音だから、人情もへったくれもねえ意味にとらえがちだが、実際には、この世は常に変わり続けるっていう、自然現 象を説いたもんだそうだ。そら、たまには良いこともあるし、悪いことだってある。どっちにしても人も世の中も、常に変わるってことさね。
ただ、あっしは商売人だから、「この世は諸行無常よのお」なんて世をはかなんで、のほほんと和歌なんぞ詠んでいるワケにはいかねえ。世の中の変化に合わ せて、お客さまの要望の変化に合わせて、常に対応していかなきゃいけないのさ。
年末もスイサンドンヤ・ドット・コムさんのトピックスは、南マグロの中トロだの、サーモントラウトだの、ししゃもの小分けだのってえのが目白押しだ。構うこたあねえ。早いもん勝ちでジャンジャン注文しておくんなせえよ。
   タイムラグを御免なすって
  ご好評いただいてる医食同源の寿司シリーズも18回。今回は前回からの続きで、光り物。イワシとアジを取り上げてみよう。
なに? イワシもアジも旬は夏頃だろうってか?
へへ、まあそう言われても仕方ねえが、こいつは続きものの宿命で、どうしても旬を逃がしてしまうことがある。
加えて申し上げれば、スイサンドンヤ・ドット・コムさんは冷凍がメインだから、旬の時期に冷凍して出荷するケースも多い。おまけに南半球から地中海、北 アメリカと、旬の異なる地域から運んでくるってワケだから、どーしたってタイムラグが起こる。おかげであっしの古い友だちなんざ、季節感がなくなっていけねえってこぼしてるが、これも「無常」ってやつで、世の移り変わりばかりは仕方ねえ。
そんなワケでお目こぼしのほど、よろしくおたの申しやす!
   イワシの頭も信心から

 

さて、その昔は下魚と蔑まされたイワシだったが、ここ数年というもの漁獲量はめっきり減った。養殖もののタイ1匹とイワシ5匹が同じ値段なんていうんだ から、異常事態もいいとこさね。
聞くところによれば、食物連鎖の頂点にいるクジラが増えすぎちまって、イワシやサバが、どんどん食われていなくなっているとか。まったく連中ときた ら、「白鯨」の昔には油をとるためだけに捕鯨をしていたくせに勝手なことを言うモンさね 。
とはいえ、イワシが旨いサカナであることには変わりない。江戸の庶民はもちろんだが、平安時代にもあの「源氏物語」の作者、紫式部が夫にかくれてこっそ り食べてたってえから、才女も旨いモンには勝てなかったって話だな。
イワシに関しては民間信仰も多い。
俗に「イワシの頭も信心から」なんて言いうが、これはどんなつまらないものでも、信仰心を持てば有難く感じるというたとえだな。
節分の時期、ヒイラギの枝にイワシを刺して魔除けにする風習がある。これは、イワシは臭気が強いので鬼が嫌うということだそうだ。これはドラキュラにニ ンニクが効くとか、密教でも仏敵をこらしめる降伏祈願に臭気や毒の強い木が使われる、なんていうのと同じことだ。
   生活習慣病にイワシはいかが?
  イワシは旨いだけじゃなく、体にも良い。良質のタンパク質やカルシウム、鉄分が豊富なだけでなく、最近よく言われるエイコサペンタエン酸(EPA)とド コサヘキサエン酸(DHA)が豊富に含まれている。特に夏から秋にかけての時期にこれは多くなるんだ。
EPAは血液の凝固を抑制し、悪玉コレステロールを抑える働きがあり、心筋梗塞や脳卒中予防に効果があるってえんだから嬉しいじゃねえか。
お父さん。イワシはあんたのための食べ物だよ!
またDHAは脳を活性化させることで近年注目されてきている。EPAやDHAはイワシだけじゃなくサバなどの青魚には、全般に多く含まれているそうだ。
脂の部分に特に多いそうだから、夏から秋にかけて、旬を迎えるころは刺身などにしてバクバク食べたいもんだ。
   イワシのにぎり寿司
  イワシにはワサビじゃなく、ショウガが合うんだ。
手開きにして、刺身や寿司で食べるならワサビよりショウガの方が相性が良いんだよ。寿司屋でも、イワシにはショウガが上に乗っかってることが多いだろ? 
イワシは手開きして腹骨をすきとり、水1カップに塩大さじ3を溶かした塩水にくぐらせる。(イワシの手開きについては、新春発売になるあっしの本を読ん でおくんな!)
ざるにのせて約40分間おいたら、酢水で洗い、酢に10分間つけてから。皮に切れ目を入れるのさ。ここで肝心なのが薬味だ。おろししょうが、あさつきの小口切り、または青じそのせん切りの薬味を作るのさ。寿司飯をにぎって、イワシをのせて、皮の切れ 目に薬味をのせれば、イワシの握りが一丁上がりだ。
   イワシの押し寿司
  一方、押し寿司は若干やり方が違う。
ネタにするのは、マイワシでもカタクチイワシでもいい。
まず、イワシは頭と尾を切り落として手開きにする。腹骨をすき切り、縦2つに切り、背びれを切り取ったら、タップリとふり塩をして20〜30分おく。ここで身を押さえ、塩がまわり身が締まり固くなったら甘酢(酢2カップ、砂糖大さじ8、塩小さじ2)に約10分漬ける。
合わせ酢(酢半カップ、砂糖大さじ3、塩小さじ2)に、炊きたて米3合を手早く木じゃくしで切るように混ぜ、広げて冷まし、すし飯をつくる。
そしたら押し寿司の木型(なければバットを使う)にイワシを皮を下にしてきっちり並べ、その上にすし飯を詰める。重しをかけ1時間おけばできあがりさ。
   マイワシのツミレはいかが?
  新鮮なイワシはツミレにすると良い。ツミレというと難しそうだが、なんてことはねえ。イワシのハンバーグさね。
寿司屋さんでも美味しいところは、ツミレ汁などのお吸い物が旨いもんだが、鍋にしても揚げ物にしても美味しくて栄養満点さね。
フードカッターがあれば、そいつでおろしたイワシをミンチにする。つなぎに卵(白身がベター)、片栗粉を混ぜ、味噌やネギ、ショウガやシソなども臭みと りに入れる。
ここでポイントなのが、なるべく手を使わず包丁とまな板で混ぜてほしい。手の温もりで臭いが出ちまうからだ。
また粘り気を出すためには、ある程度の塩も必要だ。ほんのり味がつくくらいで十分だ。できれば粗塩が望ましいが、一度ぜひ試しておくんな。
   味が良いからアジ!
  さて、ここいらでアジの話をしよう。
  「夕鯵も天秤棒も上に反り」
  これは江戸時代、夏の時期に採れ採れのアジを天秤かついで売りにくる様子を描いた句・・・というより川柳だが、イワシとともに大衆魚の代表だったアジ は、晩飯のおかずとして争うように買われたそうだ。
光り物の青魚は身分の高い人は口にしなかったものだが、江戸時代の儒学者であり政治家だった新井白石などは、アジは「味が良いからアジ」と太鼓判を押し ている。
新井先生は疝気(※せんき)持ちだったそうだけど、当時のことだ。もしかすると傷んだアジなんかを食べて腹痛を起こしていたのかもしれねえよ。
ともあれ、夏場の旬の時期、アジは抜群に旨い。(ま、最初に言った通り、今はちと時期が違うが、その辺はまっぴら御免なすっておくれ)。
だから、ちょっと前まで寿司屋では、一年中出廻ってるコハダをアジが旬を迎える夏場は引っ込めて、「夏場の光り物はアジ」として出していたんだ。季節感 がなくなってきた昨今じゃあ、そんなことはしないみたいだがね。
  ※疝気・・・腰腹部に来る痛みの総称。
   アジは獰猛かつ繊細?
  アジは成長が早く、体長2〜3cmくらいになると、1日にミリの単位で成長すると言われている。稚魚の頃はプランクトンなどを食べているが、体長2〜3cmを超える成長期になるとイワシやハゼの小さいヤツなどバクバク食べるというし、成魚になると イカにも食らいつく食欲だそうで、下手をすると共食いまではじめてしまうそうなんだ。
そんな獰猛で悪食な反面、アジというサカナは繊細で臆病な一面を持っているという。特に音や振動には敏感で、ちょっとしたことですぐビクついて、集団行 動をとって逃げたり隠れたりするんだ。
海が荒れるのを予知する能力もあり、シケ前ともなると、エサをあさろうとする習性がはたらいて大漁になったりすることが多い。
そろそろ関東大震災や東海沖地震が起こるんじゃないか、なんて言われる昨今・・・アジの動きで地震予知なんてことができるようになるかもしれないな。
   大船名物・鯵乃押寿司(あじのおしずし)
  アジの新鮮なものは青光りして、ピンと体が反り返っており、ぜいごやウロコもしっかりついている。これはどんなサカナを選ぶ時にも言えることだが、目が赤く濁っていない、澄んだものを選ぶこと。エラが赤くなっているのは避けた方が良い。腹が丸くなっ ていて、張りのあるものは脂がのっている。
こんな条件を満たしたアジなら刺身にしても寿司にしても旨いハズさ。
下ろしたアジを薄塩にあて、ひたひたの酢に漬けたものに、横須賀線や東海道線の駅弁として名高い「鯵乃押寿司」がある。相模湾や駿河湾沿いあたりで採れ た小アジを、皮付きのまま酢飯と一緒に押し寿司にしたシンプルな駅弁だが、これは旨いよ!
アジは沿岸地域で比較的簡単に釣ることができるので、特に湘南地域では夏の風物として土地っこに昔から親しまれてきたそうだ。
聞くところによれば「鯵乃押寿司」は80年、この味を続けているというが、実際には江戸の昔からこのレシピはあったんじゃないかと、あっしは勝手に考え ている。
こいつは身の色がほんのり白くなりかけたくらいの微妙な塩梅で漬け込まれていて、鎌倉観光などされた時のお弁当にいただきたい逸品でもあるな。
明日はカリフォルニアから来るお客さんを、鎌倉見物に連れていくんだが、鯵乃押寿司でもおやつ代わりに食べてもらうとすっかな。
じゃあ、お客さん。次回をお楽しみに!
   
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