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水産物 医食同源
食いねぇ、食いねぇ、寿司食いねぇ! (寿司その十一、タコ編)
掲載日:2003年08月26日

 
 まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!
 いや〜、お客さん。この夏は何だか、シミッたれた夏で終わりそうな雰囲気だな〜。
 ここんとこ何年かは、日本はもう熱帯に変わっちまったんじゃねえかと思うほど、暑い夏が続いたモンだが……これで世の中、天気ほど読めないものはないわな。
 もちろん食品業界なんてえのは、夏は暑く、冬は寒い方が良いに決まってる。特に夏はビールや清涼飲料、冷し中華に、ウナギやカレーなどと、暑ければ暑いほど景気が良くなる商品が目白押しだ。
 え? ゲンさんのトコはどうだって?
 へへへ。すまねえ、すまねえ。よそさまが『今年の夏はダメだ』なんて言ってる中で、こんなこと言うのも気が引けるけど、スイサンドンヤ・ドット・コムさんの新システムに伴って発行したカタログ「食材仕入辞典」が、それはそれはエラい反響でよ!
 何てったってその品数…350ページ、4000商品掲載というのは圧倒的だ。
 立ち上がり当初から売り上げを伸ばしてきた冷凍水産物はもちろん、冷凍農畜産物、米や肉、生鮮青果、酒類、チーズ、おつまみ、調味料など、およそ食品と名のつくものは、すべてこのサイト市場ですべて手にはいっちまう。
 安くて品数が多いだけじゃなく、材料も最高の品が用意されているんで、お客さまの中には老舗割烹の花板さんや 一流フレンチのシェフもいらっしゃるくれえだ。
 あっしが汗水たらして仕入れてきた食材を、それこそ魔法のような素晴らしいひと皿に仕立てくれる。
 いや〜、人さまのお役に立つってえのは、実に気持ちのいいモンだよな〜♪
   イカの次はタコといくか!
   さて、好評『医食同源・寿司』のシリーズは、新カタログ「食材仕入辞典」にもタップリ掲載されているので、語り手としてはあっしも嬉しい限りだ。
(あっしは思いついたことを喋ってるだけなのに、編集者さんがうまいことまとめてくれるわけで…いやあ、こいつは仕入れの仕事と違って楽なモンさね)。
 前回はイカの話をしたから、今回は「イカとくればタコ」ってなもんで…単純にタコの話をいたしやしょう。
 なんせ、タコは夏から秋にかけてが、身の締まって美味しくなる旬のモノだ。
 まあイカと同様 、横綱級の寿司ネタとは言えないが、海産物とするとなかなか面白い素材だ。最近のスイサンドンヤ・ドット・コムさんは、お客さまの層が広がってきたから、みなさまのマメ知識ネタになるような情報をご提供いたしやしょう。
   意外に多いタコ食いの国々

 

 夏目漱石だったか、「はじめにタコとナマコを食べた人間は勇気がある」と言ったそうだが、たしかにタコをはじめて見た人は、こいつを食べようなど考えないようなグロテスクな姿をしている。
 この見かけのために、「タコは日本人とイタリア、スペイン、ギリシャ以外ではほとんど食されない」なんて言われるけど、それは本当だろうか?
 実は、あっしはそうでもないと思っている。
 お隣の韓国は日本人以上にタコ好きだし、中国でもホンコンあたりでは市場で普通に売られている。
 またイタリアやスペイン、ギリシャを筆頭に、フランスやポルトガル、トルコ、チュニジア、エジプトでもタコはよく食べるんだ。
 メキシコからアルゼンチン、チリなど、中南米の沿岸地はどこでもタコ漁をしているし、ハワイやタヒチといったポリネシア諸島、ミクロネシア諸島、メラネシア諸島のみなさんはタコが大好きなんだぜ!
 ほかにもスリランカやインドの一部でもタコを食べるし… 。
 まあ、これはあっしの知り合いの業者さんの話と、自分の体験を合わせたものだから、何ともいえないところはあるが、タコってえのは思ったより食べる国が多いだろ?
 まったく、どの資料を見ても「イカやタコのことをデビル・フィッシュ《悪魔の魚》って呼ぶ」と書いてあるが、たぶん、それを言いはじめたのはイギリス人だろう。連中、海に囲まれた国でいながら、あまり旨いモンを食べてないらしく、タコも吸盤が気持ち悪いのか、食べるなど思いもよらないらしい。  
 どうも日本人は、一部の西欧の習慣を世界のスタンダードと思うようだが、ことタコ食いにかけちゃ、「ちとそれは違うぜ」と、あっしは勝手に思っているんだ。

   煮ダコ、茹でダコ
 

 さて、タコといえば茹でダコが一般的だろう。
 当然ながら、タコも茹で方次第で味が決まる。
 生ダコの場合、体に塩をふり、胴体(頭に見える部分)を手で揉み、腕(足ではない)をしごきながらぬめりを取る。吸盤に砂が入っていることもあるから、指先でかくようにするんだ。
 内臓を取り除いたら、水洗いを充分し、鍋でも釜でもいいから、グツグツたぎらせた熱湯の中にドブンと入れるんだ。茹で過ぎるとカタくなるから、そのあたりの塩梅が職人の腕ってトコだろう。
 ところで、近頃じゃどうしても寿司ネタのタコといえば、茹でダコばかりになってきたが、ちょっと前までタコの主流は、イカと同様で煮ダコだったのを知ってるかい?
 昨今では、煮ものの寿司ネタというのは、アナゴを除いて扱う店が少なくなってきている。寿司ってえのはもともと手間ひまかけて、ネタを仕込むもんで、何でもかんでも生を使えばいいってモンじゃないんだが、これも時代の流れなんだろう。
 だが、タコってえのは脂肪分が少なく、筋肉がほとんどだから、その歯ごたえが魅力ではあるのだが、どうしてもお年寄りのように歯の良くないお客さんには敬遠されがちだ。
 また、茹でダコは消化に良いものじゃないんで、これからはタコの柔らか煮を寿司ネタにするのもいいんじゃないかな。
 お客さんのお店でも、ぜひ煮ダコを扱ってほしいもんだ。

   タコの桜煮をお試しあれ!

 

 ここでちょっくら、あっしが懇意にしている築地のご主人から伺った、桜煮のレシピをお耳に入れやしょう。
 桜煮とは主にアズキと一緒にタコを煮込む料理法だが、特に決まりのようなものがあるわけじゃなく、小豆は入れても入れなくてもよいそうだ。
 ほかにもダイコンやアズキ、ダイズや米粒を入れるケースもあるが、タコ本来の旨味に影響を与えるので、寿司ネタの場合は避けた方がよい…そう築地のご主人は言ってたな。
 生ダコを使い、まず一度茹で上げる。茹でダコと違うのは、最初の揉み洗いに塩を使わないことだ。 言うまでもなく、タコそのものは新鮮なものを使う。
 また、脂肪分を嫌うので、ほかの魚を扱った手でタコに触らないこと。…まあ、そんなの当たり前のことだがな。
 使用するのは真水で、塩分、脂肪分は絶対に避ける。
 茹でダコと同じ要領で、釜にタコをくぐらせるんだが、おタコさまが桜色に変わったら湯から引き上げる。
(余談ながら、タコは体内に黒紫、赤褐色、黄色の色素を持っている。体の色を自由に変えられるのは、このためだ。それが茹でるとアルカリ性のタンパク質が変化し、黒紫の色素が溶けて赤く色変わりするって寸法さ)。
 湯から引き上げたタコは、胴体を腕の付け根から切り、腕を1本1本切り離す。鍋に酒と少量の水、醤油と砂糖を入れて、煮立ったところに切り離したタコを鍋に並べる。タコからは煮ているうちに大量の水分が出るので、水は少なくてよい。
 落とし蓋をして、約30〜40分で仕込みは完了さ。

 え? 桜煮ってえのは、4〜5時間煮込むもんじゃないかって?
 それに最初から調味料を使ったら固くなるんじゃないかって?
 へへへ。さすがお客さん、玄人だね〜。
 たしかに普通の桜煮はコトコト煮込んで柔らかくするが、こいつは寿司ネタとしての桜煮だ。4時間も火を通すと、どうしても外側の皮が煮くずれて、見た目にも体裁がわるい。
 また、ある程度歯ごたえがあった方が、寿司ネタとしては魅力がある。
 まあ、その辺の塩梅は、煮方さんの考えと工夫におまかせして、そのお店に合ったやり方をすれば良いじゃないかな。

   タコは強欲な女?
 

 タコと日本人のつきあいは古い。
『明石のタコ』で有名な兵庫県明石地方には、お后さまに横恋慕した大ダコの伝説がある。
 その大ダコは夜な夜な現われては、長い腕でお后さまを悩ませていたんだ。なんせタコの吸盤は体重の20倍もあるものを吸引する。お妃さまだってたまったモンじゃねえ。
 それを聞き付けた浮須三郎左衛門という豪傑が退治を買って出た。ところが大ダコは8本の腕を伸び縮みさせて、どうにも捕まえられない。それでも何とか追い詰めていったところ、壺の中に隠れたため、そこで壺に入る習性があることがわかり、 ようやく捕まることができたという話だ。
 それがタコ壺漁のはじまりだという伝説だが、実際には弥生時代からタコ壺が使われていたそうだから、歴史的には伝説よりはるか昔だったてことさね。
 それにしても大ダコがお后さまにからみつくさまは、なんとも凄まじいもんだ。
 8本の腕をつかって抱きつき、締め上げ、からみつき、吸い上げるその様子は、昔から好色で淫乱なイメージを呼び起こしてきた。
 地方によっては遊女をタコと呼んでいたそうだし、フランス北部のノルマンディー地方では、男の財産をすべて吸い取る強欲な女を『タコ』と呼ぶ隠語があるそうだ。

   近海ものとアフリカもの
 

 弥生時代からタコを食べていた日本人なのに、連中のランクは高くない。神饌(しんせん)や贈答品にタコが使われることは、まずなかった。
 おタコさんたちは寿司ネタにしても、ちょっと昔は一流店ではおかれなかったものだが、今じゃ近海もののマダコなんざ、すっかり高級品になってしまった。特に明石で採れるマダコは高値で取り引きされる。
 一方、分類学上はほとんど日本のマダコと同じアフリカ産のものは、市場では明確に区別されている。 スーパーなんぞに並んでいるマダコは、だいたいがアフリカ産と考えていいだろう。
 ちなみに近海ものとアフリカ産は吸盤で見分けがつく。
 アフリカ産は小豆色かピンクで、吸盤の中は白い。
 近海ものは黒ずんだ小豆色で、吸盤の中も同じ色をしてるんだ。もっとも、これは生物学状の違いじゃなく、タコを茹でる時の工程で起こる現象らしく、生きてる時はどちらも吸盤の中と体の色は一緒みたいだ。
 どちらのマダコも体長60cm、体重5kgくらいに達する。
 通に言わせると、アフリカ産はしまりがないというが、お年寄りなんかはこっちの方が食いやすいなんて人もいる。ま、この辺は好みだろうし、調理法によっても大きく変わってくるだろう。

   世界に広がるマダコの輪
   タコといえば代表的なのはマダコだが、このマイカとかマイワシといった『真』のつくのは、ちとクセモノだ。なぜって、「地元で一番見かける」だの「最もよくとれる」くらいのニュアンスだろ? 
 イカでいえばマイカなんて種類はなく、地方によってはそれがコウイカだったり、スルメイカのことを指したりとまちまちだ。つまり学術的な名称とは必ずしも一致しないんだ。
 その点マダコというのはハッキリしている。
 それどころか、マダコに近い種類の「オクトパス・ブルガリス」は、日本から東南アジア、インド洋から、ヨーロッパ、アフリカ、カリブ海から中南米といった、ほとんどの海域に生息している。
 まあ、完全に同じ種類のモンが、こんなに広く分布しているわけもないが、専門家に言わせると、タコくらい生物学上の分類が難しい生き物はないそうだ。まず動物を分類する際、骨格や貝殻など永久保存できるものによってなされているが、タコにはそれがない。
 体にしても凹凸は処理の方法によって変わるし、固定液に浸せば収縮して丸まってしまう。
 その上、イカのように水揚げ量が多いわけではないから、国や県から予算がおりにくいなどの理由もあって、いまだにその分類や生態は謎の部分が多いんだ。
   ミズダコやヤナギダコも旨いぜ!
   マダコ以外ではミズダコやヤナギダコも旨いモンさね。
 ミズダコは体長3m、ヤナギダコは1mにも及ぶ大型のタコで、道産子のみなさんにはすこぶる人気のおタコさまだ。
 こいつらは若干水分が多いので、酢ダコや味付けダコ、タコしゃぶやタコ焼きといった加工品にするのが良い。
 ちなみにスイサンドンヤ・ドット・コムさんのおタコさまは、ミズダコとヤナギダコ、そして西アフリカ産のものが中心。
 国産のヤナギダコは高級イメージがあるし、国内加工で衛生的にも安心だ。
 またミズダコも北海道産を使用しており、ブランチして生に近い状態にしたお刺身用。使い勝手が良い商品なんだ。お刺身だけでなく、たこしゃぶなどにすると、下手なマダコよりも美味しいぜ!
 どうぞ食べておくんなせえ。

 さ〜て。そろそろ、いい時間になってきやがったな。
 今回はみなさんにお店を紹介しよう。別に店からお金貰ってるワケじゃねえよ。このイダテンのゲンさんが、心からオススメできる1品を教えてえんだ。
 田町にある『駒八』(http://www.komahachi.com)って店なんだけど、
 ここの「さんまの棒ずし」はまさに絶品!
 季節限定で、今年はもう早めに入ってきているから、お客さん方もぜひ足を運んでおくんな。 (あっしが行ったのは札の辻店ってトコだ。ほかのトコでやってるかどうかは、あらかじめ確認してから行っておくんなせえ)。
 さ〜て、さんまの棒ずしと純米酒で1杯。キュ〜っとやってけえるとするか。
 それじゃ、お客さん。次回をお楽しみに!

   
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