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水産物 医食同源
食いねぇ、食いねぇ、寿司食いねぇ! (寿司その八、アナゴ編)
掲載日:2003年06月18日

 
 まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!
 いや〜。しばらく間が開いちまってすまねえな。イラク戦争があったりSARS問題で中国渡航が延期になったおかげで、代わりの買い付けに、このイダテンのゲンさんは東奔西走で大ワララさ。そんなんで、あっしはこないだマグロの買い付けにイタリアとスペインに行ってきたのさ。
 周知の通りイタリアやスペイン…またポルトガル、ギリシャといった地中海に面した国の連中は、けっこうなサカナ食いだ。ほかの白人たちがデビルフィッシュといって、忌みきらうタコだって、マリネにして食べちまう。だが、ことサカナの食い方に関して言うなら、日本人にくらべて連中もまだもう一歩のところがある。
 たとえばイタリアのサルディニア島ってえのは、魚介類の豊富なことで知られるところだが、水揚げされたスキャンピ(手長エビ)や小魚はもちろん、ホンマグロ(部位によるとキロあたり数万するようなヤツだぜ!)をそのまま日光に平気で晒してるんだ。
「おいおい、そいつはねえだろう!」ってんで、あっしは地元の漁師と、むこうでずいぶんやりあったもんさね。
 連中もあれこれ口出されてご不満だったみたいだが、仕事に関して『郷に入れば郷に従え』なんてこと悠長なことを言ってたら、商売になりゃしない。
 今回は、はじめて行った場所だったもんで、連中も日本人がサカナに関して、どんなにうるさいか知らなかったんだな。とにかくグウの音も出ないほど、聞かせ倒して納得してもらったよ。
   『剣の魚』、カジキくん
   さて、今回は寿司の8回目。
 マグロの話が出たところで、寿司にとって大ネタのマグロくんのお話をしたいところだが、以前にも3回にわたって マグロについてお聞かせしたことがあったと思う。
 まあ、マグロまだまだ語りつくせない奥深いサカナではあるが、他にも取りあげたいネタがたくさんあるので、今回はカジキについての話を中心にいたしやしょう。(寿司ネタとしてのマグロの話は、時間ができたら別の機会にお話いたしやす)。
 旬の時期がマグロと近いこともあって、昔はマグロの代用品として用いられていたのがカジキだ。
 メカジキは大きいものでは体長4.5m、体重は500〜700 kgを超える巨魚という点でも、マグロに相通じるんで『カジキマグロ』なんて呼び方もするが、マグロとはまったく別種類のサカナなんだ。 (おっと、御免よ! 玄人のみなさんはそのくらいご存じだよな)。
 なんでも、カジキ(メカジキ)は英語で"sword fish"(ソード・フィッシュ)、イタリア語では"pasce spada"(ペーシェ・スパーダ)と呼ぶそうだ。
 『剣の魚』を意味するその名の通り、カジキは上アゴが槍のように長く突き出ていて、そいつでサバでもイカでも突き刺して食べてしまう。
 性格は獰猛で鯨でも突き殺してしまうことがあるそうだし、もちろん人間にも襲ってきて、船底に穴をあけることも珍しくないそうだ。
   「老人と海」のサカナはカジキだった

 

 カジキは梶木とも書き、船の横板にあたる梶木(加敷)に穴を空けてしまうというのが、カジキの語源ともいわれている。
 みなさんも学生時代にヘミングウエイの「老人と海」を読んだことがあるだろうから、知ってると思うけど、あの時老人が釣り上げようとするのが、このカジキだ。
 あの漁師の老人とカジキが死闘をくり広げる話だな。小説とはいえ、これはもう伝説みたいになってしまった物語だが…あれは日本のカジキ漁法だったらあり得ない話なんだ。
 だって、あれはカジキを「釣り上げる」って話だろ?
 それに比べて、日本のカジキ漁獲法はちょっと違う。よくカジキのことを、寿司屋仲間では「突きんぼ」なんて呼び方をされているが、それは「突きん棒」という漁法によって獲物を仕留めるからなんだ。
 それは、カシの木に三叉の金具がはめこまれた銛竿…突きん棒でカジキを仕留めるのさ。
 まず漁師は魚見台に登り、高いところからカジキの魚影を探す。それを見つけると突き台の上に立ち、銛竿をカジキめがけ打ち込むんだ。
 水揚げされたカジキは、船上で待機している船員によって、直ちに剣のような上アゴが切断される。これはもちろん危険を避けるためもあるし、狭い船上ではジャマになるということでもあるんだ。
 今では突きん棒を行う漁船は数少なくなっているけど、こうして漁獲されたカジキは味も良いのでけっこう高値で取り引きされるんだ。
 全体的にカジキ類は時化(しけ)の時とか、風向きが変わる時に海面に浮かび上がる習性がある。突きん棒というのは、カジキの習性を利用した昔の人の知恵なんだな。

   イタリアのカジキ
 

 おもしろいことに突きん棒の漁法は、イタリアでもカジキを釣り上げる時に同じような方法が用いられていた。
 地中海は比較的静かなことで知られているから、日本近海のように海がしょっちゅ荒れることはないんだろうが…でもまあ、これはサカナを少しは知っているってことかもしれないな。
(もっともあの辺も、近頃じゃ突きん棒漁法は少ないようだ。あっしが買い付けたものにしても、まぐろ延縄船で刺身用のまぐろと混獲されたメカジキだからな)。
 ヘミングウエイの「老人と海」のように、2日以上も格闘していたら、カジキの方だって疲労困憊して味も落ちるだろうし、漁師の方だって難儀な話だ。 (でも、最後にカジキを仕留めるのは銛で突き刺したんだったな)
 連中は生で食べることはしないけど、カジキはむこうでもなかなかの高級魚だ。
 サルディニアじゃトマト煮が旨かったし、アメリカ南部のケイジャン料理ではペッパーソースのステーキがあって、西洋のサカナ料理もなかなかどうして旨いもんだよ。

   厚めに切るのがカジキのポイント

 

 カジキというのは実に旨いサカナだ。
 刺身にしてもマグロのように、すぐ色が変わってしまうわけではないので、昔は刺身といえばタイと同じ高級魚の中にランクインしていた。
(もっとも、近頃ときた日にゃ、養殖のタイ1匹とイワシ4本の値段が一緒だなんてことになってきちまった。まあ、どんなものでも価値なんて時代とともに変動するもんだがね)。
 カジキ独特の朱色がかったピンク色…あの上品な薄桃色の色調。口の中に入れた時に、舌の上でとろけるようなねっとりとした感触。
 これはマグロとはちがった魅力を持つ寿司ネタと言えるだろう。
 カジキの場合はマグロよりやや厚めに切るのがポイントだ。これはちょっと食べると淡白だが、その中にも濃厚な味わいがあるためだが、この『やや厚め』という塩梅が難しいし、寿司職人の腕のみせどころでもある。
 だが、カジキは肉の筋が複雑で固いサカナでな…。筋なりに切っつけをしたカジキは、見た目は年輪状できれいだが、これを口の中に入れるとスジがゴリッとして、せっかくの寿司が台無しになっちまう。
 カジキの場合、すべて包丁は筋にむかって使うのが基本といわれているのは、そういうワケなのさ。(マグロも同様)。

   寿司屋に人気は「二の切れ」でい!
 

 マグロでもそうだが、カジキも部位によって味や価格が異なる。
 市場に入荷されたカジキは頭を落とされ、30cmくらいの幅で4つに胴切り(サカナの大きさによって若干の違いはある)される。
 頭の方から「一の切れ」「二の切れ」と呼び、「五の切れ」まである。「五の切れ」は別名刺股(さすまた)。これは尾っぽのところが二股に分かれているのが、江戸時代に捕り物で使われた刺股に似ている。(ほら、刀を持った犯人を遠くから大勢で取り押さえる、あの道具だよ)。まあ、刺股は筋が多すぎるので、寿司屋は使わない部位だがね。
 やはり寿司屋に人気なのは「カジキなら二番」というくらい、みんな「二の切れ」を欲しがるもんだ。値段も味も良く、市場では一番、二番なんて呼び方をされている。
 それから最近では、お客さまの需要を考えて輪切りにしたカジキをさらに縦、横一文字に切り落としたものが多く出ている。(スイサンドンヤ・ドット・コムさんのメカジキもそうなんですぜ)。

  クロカジキとシロカジキ
   カジキ類は全世界で13種類ほどいるといわれている。
 また、その巨体からもわかるように、食物連鎖の中では頂点にいる生き物なんで、数はそうそういない。(余談ながら、その頂点にいるクジラが増えすぎちまって、最近じゃイワシでもサバでも下魚と呼ばれたサカナが、どんどん食われていなくなっている。まったく白鯨…モービーディックはエイハブ船長の昔なんか、連中、油をとるためだけに捕鯨をしていたくせに勝手なことを言うモンさね)。
 味が良い…肉質が最高とされているのは、やはりマカジキだろう。西大平洋からインド洋まで回遊していて、マグロと一緒にはえ縄で漁獲されるのものが多いんだ。
 伊豆周辺で突きん棒で漁獲されるものも、たま〜にあるが、まあメッタにお目にかかるもんじゃないやね。
 クロカジキとシロカジキに関しては、日本と欧米のサカナに対する違いが、その呼び名でハッキリ出ているものだ。
 クロカジキは漁獲されてから、肉が黒ずむのでその名があるといわれ、一方シロカジキは肉がグレーに変色するので、そう呼ばれるといわれている。
 ところが英語ではどちらも"blue marlin"。
つまり日本では食の対象として見られているのに対して、欧米ではスポーツフィシイングの対象とされているんだな。
 クロカジキはカマボコなんかにも使われるくらいだから、肉質はやや落ちる。
 シロカジキはかなり美味なもので、あちらでもステーキやマリネ、燻製なんかにされて食べられているという違いはある。
  メカジキが旨いぜ!
   そして、寿司ネタとしてはメカと呼ばれ、ややランク下に見られていたメカジキだが、あっしは実はこれが大好きなんだ。
 昔のようにマグロの代用にされていた時代は、色が白いのが難点になっていたが、今じゃあんまり関係ない。肉の旨味はあるし、やわらかく脂がノッている点では、第1級の寿司ネタといっても良いだろう。
 メカジキは刺身や寿司だけでなく、ステーキや照焼きなどにも最適だ。加熱しても固くならない、柔らかな肉質をもつことで、近年とみに人気の高いサカナといえるだろう。
 ちなみにスイサンドンヤ・ドット・コムさんでもメカジキを扱っていて、こいつは突きん棒じゃあなくって、マグロはえ縄船で刺身用のマグロと混獲されたものを使っている。
 もちろん鮮度の良さは抜群! 骨・皮を除去してあり、切り身やステーキなどには最適ですぜ。どうぞ食べておくんなせえ。
 カジキというのは、クセがないのに味わいが濃厚で、色々な可能性を秘めた食材だとあっしは考えている。みなさんの中で、カジキを使った創作寿司…あるいは新しいレシピを考えたら、どうぞあっしに教えておくんなせえ。
 ともかくも、これから夏場にかけて、カジキは美味しくなるよ!
 さーて、例によって河岸で寿司でもつまんで帰るとするかな。
 そろそろ、チューのロック割なんかでキューっと一杯やりながら、寿司をつまむのもいい季節になってきたよな。ではみなさん、次回もお楽しみに!
   
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