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水産物 医食同源
食いねぇ、食いねぇ、寿司食いねぇ! (寿司その五、コハダ編)
掲載日:2003年02月27日

 
まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!いや〜、スイサンドンヤ・ドット・コムさんが立ち上がって、早や3年。このイダテンのゲンさんも立ち上がりから参画させていただいてきたが、月日の経つのは早いモンだ。
もともとは、世の中のデフレ傾向から立ち上がったこのショップだが、売り上げの向上はもちろんのことだが、最近はちっとばかし名が知られるようになってきたようだ。(もちろん名が知られると言っても、玄人衆相手の商売だから、 ホテルやレストラン、ファミレスチェーン、旅館や食堂といった業界での話だが、それでもスイサンドンヤ・ブランドはずいぶん浸透してきたようだな)。まあデフレなんてえのは、世の中全体から見て決して歓迎できることじゃねえ。
あっしは、どこかの経済評論家みたいに「デフレには、良いデフレと悪いデフレがある」なんて、世迷い言は言わねえけど、安くなってお客さまが満足するなら、トコトン良いものを安く売ろうってえ心意気は誰よりも持っているぜ!
そう…最近はどこかのファミレスが400円を切るランチとか出したそうだが…な〜に、モノによっては、スイサンドンヤ・ドット・コムさんの商品を使って、そのくらいの価格提供することも不可能じゃない。
まだスイサンドンヤ・ドット・コムさんをよく知らないお客さんは、ぜひともパンフレット請求しておくんなせえ。
素晴らしい食材を信じられないような値段で、入手することができますぜ!
さてさて、今回は寿司の話も第5回めになるけど、話はまだまだ尽きないとこなんで、もう少しおつきあい願いやしょう。
   一見さん、大歓迎!
  経済面でいえば悪影響しかないような物価下落現象だが、食べ物屋の接客態度や味に関しては、良い影響もあったようだ。
不味くてサービスの良くない店はたちまち潰れちまうから、どこでも質を上げるのに賢明の努力をする。また値段も味のうちだから、価格を下げてしかも美味しいものを提供するのに必死さね。
デフレは日本人に努力することと、一所懸命に働くことを思い出させてくれてるのかもしれねえ。
また、京都の料亭なんぞで、『一見さんお断り』をモットーにしていた店も、気取ってばかりもいられなくなり、ランチまで初めたトコまであるそうだ。
背に腹は変えられねえってワケだが、普通の人だってちょっと奮発すれば、料亭の味が楽しめるようになったんだから、こいつは良いことだと言えるだろうよ。
それに伴い、寿司屋さんの敷居も昔とくらべてずいぶん低くなった。
10年くらい前までは、ちょっとした寿司屋には妙なルールがあって、勘定をきちんと計算しない店が多かったんだ。だいたいの食べた感覚で勘定をするから、一見さんで寿司屋に入ると高く取られるなんて、よく言われたもんだ。
女性と一緒に寿司屋に行ったり、通ぶったり、また知ったかぶりをすると、「生意気な客だ」ってんで勘定を高く取られる…そんなことが、わりと最近まで当たり前に行われていたんだな。
   寿司屋は玉子焼きから?

 

これで寿司くらい、食べる時の能書きが、あれこれ多い食い物もないだろう。
最近は回転寿司の普及や、激化する競争の中で、店でも客でも能書きを言う人は少なくなったのかといえば、そんなことはない。通を自認するお客もそうなら、寿司屋の方もなかなかどうして、うるさい店は多いようだ。たとえば 「寿司屋に行ったら、まず玉子焼きを注文しろ」なんて言うのを聞いたことがあるだろ?
これは誰が言い出したのか知らないが、寿司屋の善し悪しは玉子焼きでわかるというわけだ。もちろんこれはある意味真実で、玉子焼きは寿司屋のネタの中でも熟練が必要なネタだ。
ソバ打ちやうどんに熟練が必要なように、シンプルなものほどゴマカシが利かない。
玉子焼きだって、それは同じことさね。
ただ、「寿司屋は玉子焼きから」という決まりがあるわけじゃない。
前回まで、寿司のルーツや歴史をたぐってきたから、みなさま方もよくおわかりだろうが、もともと江戸前寿司なんてものはハンバーガーと同じファストフードで、そんなに気取って食べるモンじゃねえ。
玉子焼きってえのは甘味の強いもんだろ? (それに玉子焼きはサカナじゃないからな)。 
あえて西洋料理のフルコースにあてはめて言うならデザートに近いものだよ。あっしの個人的な好みから言うと、玉子焼きはあとの方でたのむ方が旨いような気がするな。
おっと! 単にこいつはあっしの好みだよ。
つまり、寿司の注文の仕方に決まりなんぞないのさ。食べたいものをフトコロ具合と相談して注文していくのが、いちばん美味しい食べ方だと思いますぜ。
ただ、お店の方はお客さまから最初に『玉子焼き!』と言われたら、誠心誠意『いかがでしょうか』とお出しする心意気はほしいもんだな。間違っても『この野郎、通ぶりやがって』とか『うちの店を試すような真似すんじゃねーよ』なんて……そりゃ、思うだけでもいけないよ。 みなさまの中にはそんなお店はないだろうが、慢心と傲慢、そして油断は人も組織も滅ぼすからね。
   江戸前寿司の三役揃い踏み
 

寿司というのはお客の自由度が高い食べ物だ。それを寿司屋みずからで窮屈な作法をつくり、商売をやりにくくするこたあない。
今日の回転寿司の隆盛も、お客さまの選択肢が高いことがウケているんだろう。選ぶ楽しみも一緒に売るってことだな。
とにかく基本はいかに美味しく食べられるかだが、知識というのは食の楽しみを倍増させることもたしかだ。
それじゃあ、ちょっと寿司をサカナのネタ別にアイテムで分けてみようか。

  1. マグロ、カジキマグロ、カツオといった赤身のネタ。
  2. タイやヒラメ、シマアジ、カンパチ、ハマチなどの白身のネタ。
  3. コハダ、イワシ、アジといった光りもののネタ。
  4. アナゴやハマグリといった煮物ダネ。
  5. サケやマスといった、上の4つには当てはまらないネタ。
  6. 海苔巻き、軍艦寿司などの類い。
ざっとこんなカンジで分けたが仕込み方の違いでこのアイテムは変わるし、ハマチなんかを光りものの中に入れる店もあるようだ。
さて、その中であっしが思うに江戸前寿司には三役がある。(おっと、玉子焼きは別だよ。
これはサカナに限って言えばのことだが…まずマグロ赤身のヅケにコハダ、そしてアナゴだろうな。
寿司ってえのは、ただサカナを切ってシャリの上に乗せる食べ物じゃないのは、よくご存じだろうけど、これら3つは仕込みにたいへん手間のかかる素材なんだ。
だからこそ寿司屋がもっとも力を入れて仕込むネタといえるだろう。そして、いちばん江戸前寿司らしい素材でもあり、何度食べても飽きがこない素材なんじゃないかな。
   コハダは光りものの代表格

 

まずはマグロの話といきたいとこだが、以前にも話をしたことがあるので、こいつは後回しにしよう。
今回はコハダから寿司ネタの話をいたしやしょう。
何たって、光りものは寿司の華。こいつらがいなかったら、寿司の魅力は半減するわな!
コハダはブリやスズキと同じ出世魚で、シンコ→コハダ→ナカツミ→コノシロと呼び名が変わっていく。
東京じゃあ寿司ネタなら、みんなコハダと呼ぶが、学名はコノシロ。関西ではツナシと呼ぶ。
そう言えば、マンガ《将太の寿司》でも、"シンコ" と呼ばれるドンくさいかけだしが出てくるな。(先輩の佐治安人に『おめえにはコハダにもなれないシンコって名前がお似合いなんだよ!』ってイビられる役だが、美味しいコハダに進化するってえ、食べ物マンガによくあるお約束のお話だそうだよ)。ちなみにシンコは5〜6cm。コハダは12〜3cm。ナカツミは16〜7cmで、コノシロだと20cm前後の大きさになる。
食べ頃にはシンコかコハダまでの大きさが美味だろうな。特に14〜5cmくらいのコハダの状態が最高だろう。
ナカツミまでは何とか食べられるが、コノシロの大きさだとウロコや切り身の部分が大きすぎて、見た目にも品がないので、昔から高級店では出さなかったものだ。
出世魚と呼ばれて目出たいサカナの呼ばれた一方で、江戸時代は切腹の作法に用いられ『腹切り魚』といってイヤがられたのがコハダなんだ。
人間の都合で上品だ下品だと決められてしまうのは、コハダにしちゃ 迷惑な話だろうけどな。
このランクの違いがどんな理由から来るのかわからないが、コハダというのは好きな人が多い反面、敬遠する人も多いサカナだ。それに近い現象となのかもしれない。

   寿司ネタ以外に使えないコハダくん
 

コハダというサカナは、調理方法がちょっと変わっている。なんせ文字通り、煮ても焼いても食えない。炙ったりすると、いやな臭いと煙が出て、そりゃとても食えたモンじゃねえ。
煮ても焼いても食えないのに、塩漬けして酢で洗えば美味という、ある意味でもっとも寿司らしい素材のサカナがコハダなんだ。もっと突き詰めて言うと、寿司ネタ以外に使えないサカナがコハダなんだよ。
コハダは切り身にしたあと盆ザルに並べ(皮を下にする)、粗塩を振りまいて五重くらいにかさねる。
コハダは身が柔らかいから、サバくのに若干の訓練が必要だが、ここでもっと難しいのは塩加減だ。
まんべんなく塩を振りまく「振り塩」はもちろんのこと、そのあと水洗いするまでの「塩の時間」には、実に神経を使う。
あっしの行きつけの店だと、夏場で1時間から1時間半。冬場だと3〜4時間は漬け込むというな。
これは季節やその日の気温、湿度によって変わるのはもちろんだが、コハダの大きさや産地やそのサカナの持つ脂肪の加減まで計算して、「塩の時間」を判断しないといけないから、こいつは熟練が必要だ。
塩漬けが済んだら、まずタップリの水で洗う。ここで塩と浮いてきた余分な脂肪を洗い落とすんだ。
洗ったコハダはよく水を切って、最初の酢に漬けて酢洗いをする。
それから、もういちど新しい酢を入れた瓶などの器に、コハダを菊の花状に並べて漬け込むんだ。
さらに瓶から出したコハダは、味を馴染ませ熟成させるために、半日くらいそのままにしてから握りたいもんだ。
どうでえ、気の遠くなるようなレシピだろう?
寿司ってえのは、何でもかんでも生の切り身をご飯の上にのっけりゃいいってモンじゃねえ。
仕込みにこれだけの手間をかけて、はじめて美味しいお寿司がみなさんの食卓にのぼるって寸法さ。
なんせ、寿司のルーツは醗酵食品。熟成させることは忘れちゃならない。そんな意味でも、コハダはきわめて原点に近いネタといえるのかもしれねえな。

   シチリアのコハダ
 

そういえば余談になるが、あれは4年ほど前になるかな…。
あっしはマグロの買い付けで、シチリアのトラーパニに行った時のことだったかな。シチリアってのは、そう、イタリア半島の長靴の先っぽにあるマフィアで有名なトコさ。
その時、ジェノバから来たといシェフが、セコンド・ピアット(メイン・ディッシュ)に「漁師風マリネ3種盛り合わせ」というのを出してくれた。
ひとつはホタルイカのような小さなイカのマリネで、もうひとつがイワシのマリネ。
そしてもう1種類に何とコハダのマリネが出たんだ!酢は米酢ではなく、白いワインビネガー。塩はおそらく有名なシチリアの海水塩だろう。
塩とビネガーでシメたあと、上にローズマリーといったキツい香のする香草に漬け込んであり、最後にオリーブオイルとバルサミコ酢をたらしてある。
食べてびっくりだったが、まぎれもなくコハダのイタリアンさ!
コハダなんて日本人以外は食べないだろうと思っていたが…いやはや、イタリアの連中もやるもんだ。シェフに通訳を通して聞いてみると、レシピはほぼ同じだった。
あっしは、あの時いずれ寿司はハンバーガーにとってかわり、世界を制覇する料理になるんじゃないか…なんて思ったもんさ。
これは、意外にカルフォルニア・キュイジーヌにしてもイケるだろうし、アメリカ人相手に寿司をやる時には有効かもしれないレシピなんじゃないかな。
おお。それじゃあ、これからちょくらと寿司でもつまみに行くか。
そうさな…今日は趣向を変えて、アメリカ風の寿司を食わせる店で、白ワインでもたしなんでみるとするか。じゃあ、みなさん、次回をお楽しみに!

   
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