| 掲載日:2001年1月29日 |
| 冬の味覚は『海のミルク』カキに決まりだぜ! | |
| まいど、まいど。イダテンのゲンさんです! どうですかい、新世紀の景気はよ。こちとら、近頃の暖冬で、去年までは鍋の材料の売れ行きなんかイマイチだったんだけど、最近は売り上げも持ち直していいカンジだぜ。株安だ何だって、ヤキモキしたって仕方ねえや。ウメえモンでも食べて、活力出さねえとな! 例によってワシは明日、広島は安芸の宮島に出張さ。何だと思う、お客さん?カキですよ、カキ! なにね…エビ太郎の親戚がカキの養殖業をやってるもんね。ヤツのカオで、ちっとは勉強してもらおうって寸法さ。ヤローは今トラブル抱えてやがって、それどころじゃねえらしいがな。へっへっへ。ま、この商売は文字通り水モノ、トラブルなんざあ水産人にとっちゃ洗礼みたいなもんだがね。 ま、そんなワケで今回は今が旬 、冬の味覚カキをお届けにあがりますかね! |
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| 英雄、カキを好む | |
| 前回、イセエビの殻が縄文時代の貝塚から発見されてたって言ったけど、カキの殻はイセエビよりもっと大量に発見されている。例によって、日本人の海産物好きは昔っからってことさね。 ただカキに関していえば、これくらい世界中で食べられている貝はないだろうな。 生で魚介類を食べる習慣のない西洋人も、生ガキだけは喜んでムシャぶりつくくらいで、古くはかのジュリアス・シーザーもナポレオンもビスマルクも大好物だったんだ。シーザーがイギリスを攻めたのはテムズ川河口のカキが食べたかったからとか、ビスマルクは年間175個のカキを食べたとか、カキの逸話にゃことかかないんですよ。 すでにローマ時代にはナポリで養殖されていたっていうから、ヨーロッパ人にとってもカキは食べ慣れた食材だったんだな。まあ、慣れていたからこそ生でも食べらてきたってことさ。 イタリアでも、17世紀の大航海時代に南米からやってきたトマトより、カキの方がずっと古くから食べられていたってワケだ。 |
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| 日本のカキ養殖は 広島ではじまった! | |
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自然のカキは主に岩場の水面近くに生息してるんだが、生まれるとすぐに岩にへばりついて、そのまま生涯そこから動くことはないんだ。 そのためか養殖が比較的しやすかったんだろうな。日本での養殖は、江戸時代初期(1670年頃)がはじまりというから、ハナシは古いやな。広島は小林五郎左衛門というお方が、アサリの漁場を囲っていた竹垣に、マガキが付着するのを見て、『おお!』とばかりにヒントを得たのがきっかけだそうだよ。 今の養殖の原型になったのは大正時代で、現在の筏式垂下養殖法…イカダシキ・スイカ・ヨウショクホウをはじめたんだ。(へっ、漢字ばかりでこむずかしい言い方だよな。イカダぶら下げ養殖法のがわかりやすくって、いいんじゃねえのかな) 。 この方法ってえのはホタテガイの殻などを連ねた付着器(コレクター)に、カキの幼生を付着させるやり方だ。海中を浮遊するカキの幼生が0.4mmくらいになった頃を見はからい、コレクターにくっつけるんだな。 稚貝は4〜5日でゴマ粒くらいの種ガキ(スパット)になり、成長に合わせてコレクターの間を開けていくワケだ。春にスパットを入れると、明くる年の1月下旬には販売可能な大きさになるんだよ。 |
| 広島のカキはなぜ旨い? | |
| まず広島のカキが旨い1つめの理由として、カキ養殖のはじまった広島は、瀬戸内の静かな海で潮の流れもゆるやかなことが挙げられる。養殖イカダを下げるのには安全なんだね。 それから2つめの理由だが、緑豊かな中国山脈の間を縫って流れる河川水には、栄養塩類(養分)がタップリ含まれていてよ。こいつは…栄養塩類はカキの餌になる、植物性プランクトンの増加を促すのに欠かせねえモンなんだ。 お客さん、知ってるかい? カキってヤツはあの小さな体で、何と1時間に25〜30リットルもの海水と一緒にプランクトンをモリモリ食べるんだ。そんな山と海にはぐくまれた、カキの神秘の生命力をいただけば、元気になること受け合いだぜ! 3つめの理由としては、水温が夏に上がって、秋に下がることも良い条件になってるね。夏の気温上昇は産卵の刺激になるし…秋の気温下降は俗に『カキの身入り』って言って、カキの体内にあるグリコーゲンの蓄積に大きく貢献するんだ。 |
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| 力の源・グリコーゲン! | |
| グリコの名前もグリコーゲンからきてるらしいが、これは人間が筋肉を動かすときに欠かせない多糖類のひとつなんだ。グリコーゲン自体は無味無臭なんだが、旨味成分のグルタミン酸などと一緒になると、コクやまろやかさが出てくる味の名脇役なんだな。カキはこのグリコーゲンもグルタミン酸もタップリ含まれているんだよ。 また、カキには、あのヌメリの中に血中コレステロールの価を下げるタウリンが豊富に含まれている。また、ヨウ素や鉄、銅などミネラルも多量に含まれている理想的な食品なんだ。 まあ、何と言ってもカキの味と栄養、そしてその生命力の決めてはグリコーゲンにあるんだけどね。 |
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| カキ、その生命力の秘密 | |
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ところで、カキのヤローは一生岩にへばりついていて動かねえから、当然筋肉なんか使わない。 それなのにカキになぜ、人間が動く時に必要なグリコーゲンが多いのかって? それが『海のミルク』とも呼ばれるカキの生命力の秘密でもあるんだな。 もともとカキが生息しているのは、岩場の水面近くだろ。干潮で水が引くとエラ呼吸をしているカキは当然イキができなくなる。ホタテみたいに身全体が筋肉でできてるような貝だったら、スイスイ泳いで移動することができるが、あいにくカキは自分で動くことができねえ。干潮の何時間かの間、水藻のくっついた殻を閉じて息も止め、ジッと忍の一文字さね。 それでもカキのヤツが生きてられるのは、グリコーゲンってえ多糖類が、デンプンや脂肪などと違って無酸素状態でも分解できてエネルギーを出せるからなんだな。運動することができないカキに、筋肉が(無酸素運動で)消費する多糖類・グリコーゲンが、多いのはそんなワケさね。 ヤツラ、そのグリコーゲンのおかげで、陸揚げして海水のない状態でも、1〜2週間は生きてるっていうから、いやはやスゲーじゃねえか。 それからヤツらときたら、商品パックされた状態でも、エラの繊毛は1週間くらい動いてるんだそうだ。心臓が止まっているのにだよ! 古代の英雄たちが精をつけるのに、そんな生命力のカタマリのカキを一所懸命に食べた理由がよくわかるよな。 みなさんも、そんなカキの力をいただきたいとは思いませんか? |
| Rのつかない月 | |
| さて、『Rのつかない月※1はカキを食うな』とか、『花見過ぎたらカキ食うな』とは、昔から言われることだが、カキは夏に産卵するんで、その時期グリコーゲンが大量に消費される。その結果、味が落ちるのというのが大きな理由さ。(こいつらはカタツムリみたいに雌雄同体で、卵子と精子が交代でつくられるんだ)。 『Rのつかない月』のカキがダメだといわれる理由に、夏は細菌が繁殖しやすくなるからというのは、あまり本当じゃない。カキの食中毒の主な原因になっているSRSVちゅうウイルスは、人体の中だけで繁殖するもので、もともとカキの鮮度にはあまり関係なくあるものなんだ。 ま、ワシんトコのカキはそんな心配、まったく御無用さ。カキは自分の体内に入った不要物を排出できる自浄作用があってね。殺菌した海水の流水に1昼夜入れておくと、それまでカキの体内にあった大腸菌や有毒な微生物を排出してくれるってえ、ありがたい作用があるんですよ。 うちじゃ生食用だろうと過熱用だろうと、出荷前にそんな滅菌海水で厳格に浄化してるんですぜ。 だから、安心して食べておくんなせいや! |
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| 夏に旬のイワガキ | |
| だが、カキの中でもイワガキという種類は、夏に旬ってえヤツがある。青森の陸奥湾以南の外洋に生息するっていうが、北海道なんかでも採れるんだぜ。俗にナツガキともいうが、こいつらは夏に一番グリコーゲンが増える種類なんだな。 最近はTVのグルメ番組なんかでもよくとりあげられてるよ。殻の長さが20cmくらいあって、身はそれにくらべると小さいが、それでもけっこう普通のマガキにくらべるとでかいわな。身もプリプリして美味しいよ。 |
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| カキ、いろいろ | |
| カキの種類は世界中で120種はあるっていうけど、日本で食べられているのはだいたい4種類だね。 1. 一番食べられてるマガキで、これはサハリンから朝鮮半島、中国沿岸まで分布されている。日本の養殖だと広島と宮城が最大の産地で、俗に広島産は大きくプリプリして、宮城産は旨味があるが、これは好みだろうな。それから、三重の的矢産なんてブランドも旨いもんだよ。 2. それから、前述の夏に旬を迎えるイワガキ。 3.房総半島以南の浅海に住むイボタガキ。マガキが精子を海中に放出して受精するのに対して、イボタガキはメスの体内で受精して保育するんだ。 前者のマガキタイプを卵生種で、後者のイボタガキタイプを胎生種っていうんだ。まあ、食べるほうにとっちゃ、どっちだっていいんだがね。こいつらはお互いにくっつきあって団塊状になる性質がある。採苗が難しいんで、養殖はされてないんだよ。ヨーロッパガキなんて、フランス人がよく食べてる丸っこいカキは、形なんかもこれに近いもんだ。 4.それから殻がツルツルしたスミノエガキ。こいつは日本だと有明海で採れるもの。 このあたりが代表格だが、まあ横綱は何てったってマガキだろうね! |
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| 生ガキはお好き? | |
| さて、ワシの好きなカキの食べ方は、まーず生ガキかな。お客さんはどうだい? 生の状態はいちばん旨味成分のグルタミン酸が多く含まれているんですぜ。 何、生でそうたくさんは食べられない? ううむ、そりゃあもっともかな…。まあ、食べ物には何でも生の力というものがあって、ある程度の食べると、それ以上進まなくなる。カキの場合は、旨味成分のグルタミン酸以外に、苦味成分にあたるアルギニンやバリンというアミノ酸があって、それは他の貝でいうと、キモなど内臓の中に多く含まれてるものなんだ。 このニガ味はカキの好き嫌いが別れる要素で…生で食べるならなおさらかもしれないな。 そんなイミでお勧めの食べ方は、生ガキなら酢やレモン汁で食べること。 何、そんなの生とどう違う? 当たり前のことを言うなって? まあまあ、そう言いなさんなって。洋の東西を問わずこの食べ方はスタンダードだ。甘味がしまって、ぬめりが和らぐから、旨味がいっそう引き立つんだよ。これは立派な料理法さ。 生食のニガ手な人は殻のまま焼いて、レモン汁もよし。 |
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| カキフライはカキ料理の王様! | |
| カキフライ、土手鍋、グラタン、コキール、オイル漬け。 加熱したって何したってカキはウメえモンだけど、ワシのオススめはやっぱし、誰が何と言おうとカキフライだ。カキ料理の中で、これほど誰にでも好まれる調理法は他にはないハズさ。 加熱すると温度が高い分、旨味成分のグルタミン酸に、舌が敏感に反応するようになる。その上、苦味だってマイルドになるから、カキの苦手な人も抵抗なく食べられるって寸法さ。 ところでカキは前述のように体内の水分を外に出そうとする性質があるので、どんなに水気を切っても身のまわりに水の膜ができてしまう。そこで、タマゴ1コに小さじ1杯くらいの水に小麦粉少々。それを泡立て器でよく混ぜたてんぷら衣にカキをザックリ混ぜ、ふんわりパン粉をまぶしつけるんだ。 それを180度の油で1〜2分カラリと揚げる。 金色の衣から油とエキスがジュージュー出て、サクッとした食感にカキの旨味がジワ−っと口の中に! うへへ、帰ったらとびきりのカキに、とびきりの純米酒でキューっと一杯といくかな! (そうそう、それからお客さん。カキフライにはまだしも生ガキにワインはいけねーぜ。カキにはゼッタイ日本酒でい! 特に生ガキに日本酒以外の酒は合わねえ。ウソじゃないよ!) じゃあ、お客さん! また会いやしょうや。 |
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| ※1Rのつかない月とは、May(5月)、Jun(6月)、July(7月)、August(8月)。夏期のおよそ4ヶ月間。 |
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